1.5億年前の恐竜は羽毛持つ新種 飛翔の起源揺さぶる

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

現在の米国ワイオミング州にあたる森で狩りをする、新種恐竜ヘスペロルニトイデス・ミエススレリのつがいの想像図。ヴェロキラプトルの近縁種で、鳥が空を飛べるように進化した過程を解く手がかりとなるかもしれない(ILLUSTRATION BY GABRIEL UGUETO)

このほど新種として発表された小さな恐竜が、鳥が空を飛ぶようになった起源に一石を投じている。

2019年7月10日付けで学術誌「PeerJ」に発表された論文によると、この新種恐竜は「ヘスペロルニトイデス・ミエススレリ(Hesperornithoides miessleri)」。体長1メートルほどの羽毛恐竜。ヴェロキラプトルの仲間や鳥類を含む、原鳥類(Paraves)に属するという。

この化石は、米国ワイオミング州とコロラド州を中心とする米国西部に広がるモリソン層という約1億5000万年前の地層から発掘された。ここはブラキオサウルス、ディプロドクス、ステゴサウルスなどの巨大恐竜の化石の産地として知られるが、そのなかで今回の恐竜は最も小さい。

「モリソン層では、大きな化石が出るのが普通です。ヘスペロルニトイデスと命名された今回の恐竜は、骨格全体でもディプロドクスの椎骨1個ほどしかありません」と英マンチェスター大学の古生物学者で、論文の共著者であるディーン・ローマックス氏は話す。この化石は「モリソン層の恐竜がこれまで知られていた以上に多様で、小さな恐竜も生息していたことを示しています」と彼は付け加えた。

今回の論文は、古生物学者たちをざわつかせている。というのも、論文の著者らはヘスペロルニトイデスについて、現生鳥類が、樹上から滑空する恐竜の直接の子孫でなく、地上で暮らす恐竜から進化したことを示す手がかりであると論じているからだ。

羽毛をまとった小さな殺し屋

今回の化石が見つかったのは01年、ワイオミング州で最大の竜脚類「スーパーサウルス」の化石を発掘している最中のことだった。全長約35メートルのスーパーサウルスの骨を掘り出そうとしていたシャベルが、偶然ヘスペロルニトイデスの化石の鼻の部分を貫いたのだ。

当初、この化石は骨の小ささから翼竜(恐竜と同じ時代に生きていた空飛ぶ爬虫(はちゅう)類)だと思われた。ところが、慎重に標本を作成すると、考えていた以上の発見だとわかった。

標本は現在、ワイオミング恐竜センターに収蔵されていて、古生物学者の間では、2001年の発掘にボランティアとして参加したローリ・ホッケメイヤー氏にちなんで「ローリ」と呼ばれている。

骨格の復元から、今日のワイオミング州にあたる地域に生息していたヘスペロルニトイデス・ミエススレリがどのような外見をしていたかが明らかになった。科学者たちは、この恐竜は全身を羽毛に覆われ、前肢には長い羽毛があり、事実上の小さな翼になっていたと考えている(ILLUSTRATION BY SCOTT HARTMAN)

標本の作成と最初の分析のあと、ローリは何年もの間、放置されたままだった。しかし、恐竜センターで標本作成研究室を運営しているビル・ワール氏が08年にローマックス氏に標本を見せる。ローマックス氏はこの標本に魅せられた。

ローマックス氏はローリを忘れることができず、15年にクラウドファンディングで資金を調達し、翌16年、ウィスコンシン大学マディソン校に標本を持ってきて、1週間で集中的に研究を行った。