イノベーションを生む公務員 試行の積み重ねは日本一山田崇著 『日本一おかしな公務員』

「毎日がなんとなく過ぎていて仕事が退屈」という若者は元気がもらえそうだ
「毎日がなんとなく過ぎていて仕事が退屈」という若者は元気がもらえそうだ

少子高齢化や過疎化が進む日本各地で、地方公務員には「地方創生」を担う役割が求められている。長野県塩尻市役所に勤める山田崇さんは、田舎の町や村を活性化するさまざまなプロジェクトを立ち上げてきた「街おこし・村おこし」のカリスマだ。面白いことを次々と考え出す発想力と、とにかく動き回って人を口説きまくるエネルギーはどこから出てくるのか――。今回紹介する『日本一おかしな公務員』で、本人が思う存分語ってくれた。

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著者の山田崇さんは長野県塩尻市で1975年に生まれました。通った高校は伝統校の松本県ケ丘高校(長野県松本市)です。教師を目指して地元の信州大学教育学部を目指しましたが受験に失敗。浪人生活を経て千葉大学工学部に入学しました。卒業後は父親のすすめで生まれ育った塩尻市役所の公務員に就職します。若手時代を税務課・財政課で過ごしたあと、松本広域連合に出向して4年間、複数の自治体でつくる広域連合で行政の経験を積むことになります。

地元就職した典型的な地方公務員

山田さんは09年に塩尻市役所へ戻ります。それ以降、市民交流センター開設準備室や地方創生推進課などで地域おこしの業務に携わってきました。途中、商工会議所への出向も経験しています。こう経歴を振り返ると、優等生として地元で育って大学入学のために都会へ。卒業と同時にUターン。市役所では適度に人事異動を経験している典型的な地方公務員のイメージです。

山田崇さん

しかし実態はかなり違います。山田さんは地元でユニークなプロジェクトを次々と立ち上げ、そのいくつかを成功させてきました。知られているところでは、空き家対策として始まった「nanoda(なのだ)」、市民発のイノベーションを生み出すための拠点「スナバ」、官民連携で地方創生に取り組むスキーム「MICHIKARA(ミチカラ)」があります。

いったい、どんなプロジェクトなのでしょう。ここでは「グッドデザイン賞2016」を受賞するなど全国的にかなり知られることになった「MICHIKARA(ミチカラ)」の概要をご紹介します。プロジェクトの最終的な目標は住みよい街をつくるために社会課題を解決することです。第1ステップとして、塩尻市から「解決してほしい地域課題」が提示されます。そして、解決策を考えるために6~7人からなるチームをつくります。民間企業と市役所から数人ずつのメンバーが参加し、解決のためのアイデアをまとめるのです。

ただし、アイデアを競う一般的なビジネスコンテストとは異なり、プランをきちんと実行するまでがミッションです。チームは計画を塩尻市長にプレゼンテーションします。よいものなら予算化されます。最速で1年以内に実現するものもあります。

企業側にとってのメリットは、課題解決型の研修を受けさせるのと同じような社員教育の効果が期待できることです。企業の名前で関わった以上、社員は必死に取り組みます。いわば「官民連携プロジェクト」の進化系といえるでしょう。「連携」や「協働」というと掛け声だけに終わりがちですが、山田さんたちはアイデアと行動力で効果の上がる仕組みを作り上げたのです。

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