日経ナショナル ジオグラフィック社

驚きの発見が続々

すると、1つめの驚くべき発見があった。小さな破片の方は後頭部で、現生人類にそっくりだったのだ。

これほど大胆な結論を導くのに、この破片は証拠として小さすぎるように思える。だが、後頭部にはホモ・サピエンスを他のヒト族(ホミニン)とを区別する特徴がいくつも含まれている。米ニューヨーク市立大学の古人類学者エリック・デルソン氏は、あごの骨と同じくらい後頭部は特徴的だと語る。デルソン氏は研究チームの一員ではないが、論文に関して「ネイチャー」誌の「ニュース・アンド・ビューズ」欄に記事を執筆した。

まず、形が違う。あなたも自分の後頭部に手を置いてみると、グレープフルーツほどの丸みを帯びているのがわかるだろう。だが、ネアンデルタール人の後頭部は引き伸ばされたように細長い「シニョン」と呼ばれる特徴的なふくらみを持つ。アピディマの破片にはこれがなかった。

この時点で、研究チームは分析結果を発表しようと論文を提出したが、却下されてしまう。

研究者たちはその時、2つの化石があまりに近くで発見されたために、どちらも同じ16万年前のものと思い込んでいた。しかし、ネアンデルタール人と現生人類がこれほど至近距離で同時に存在するようになるのは6万年前以降と考えられている。それ以前に両者が共存していたことを示す物的証拠は見つかっていない。したがって、ネアンデルタール人の化石のすぐそばにあった化石が現生人類のものであるという結論に、査読者は「当然ながら懐疑的だった」と、論文の著者で大英自然史博物館のクリス・ストリンガー氏は言う。

そこでチームはさらに分析を重ね、破片の年代を測定したところ、2つめの驚きが待っていた。小さな破片は21万年前のものという結果が出たのだ。

もしこれが裏付けられれば、頭骨は知られている限りアフリカ大陸以外で最古の現生人類のものとなる。これまでで最古のものは、イスラエルで発見された上顎骨の一部で、18万年前のものと測定されている。また、ヨーロッパで過去に発見された最古のホモ・サピエンスより15万年以上も古い。

教科書を書き換えるのはまだ早い?

この研究が正しければ、現生人類がアフリカを出たのはこれまで考えられていたよりもはるかに早かったことになる。つい最近まで、人類は長くアフリカに留まり、現代人につながるホモ・サピエンスの集団が大陸を出たのはほんの6万年前と考えられていた。

しかし、中国の中央部では210万年前の石器が見つかっており、人類と近縁の何者かが既にそこに住んでいたことを示唆している。また、小型人類のホモ・フローレシエンシスは70万年前には東南アジアの島に到達していた。そして、ネアンデルタール人の祖先もまた50万年前にはヨーロッパへ到達し、40万年前にデニソワ人と分岐したとされている。

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