映画館の話し声が気になる
脚本家、中園ミホさん
映画を見に行くと、周りの話し声が気になってしかたありません。本編は当然ですが、予告編の間もイライラします。予告編は映画の世界に入り込む準備段階だと思います。知人に話したら、ワガママだとか神経質だとか言われました。(京都府・50代・女性)
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よくぞ言ってくださいました。私も予告編、大好きです。そのために映画館に行っているんじゃないかと思うくらい、スクリーンで予告編が始まるとわくわくするので、相談者さんの気持ちはよく分かります。
予告編は映画じゃないという感じで、どうでもいいおしゃべりをしている人が何と多いことか。相談者さんはワガママでも神経質でもありません。映画を愛しているのだと思います。
私の経験からすると、予告編でおしゃべりする人は本編が始まっても音をたてることが多いです。でも予告編の段階で注意する勇気は、私にはありません。かわりに本編が始まってコトリとでも余計な音がしたら、すごい勢いで「静かにしてください」と言います。
いつ攻撃してやろうと待ち構えているような私も嫌ですが、予告編のときに文句を言うと本編に入ってから気分が悪いじゃないですか。館内が明るいうちに、怖い人からにらまれたり言い返されたりするかもしれません。予告編がいかに大事か、もっと広く知ってほしい。「静かにしよう運動」のようなものを起こしたいくらいです。
映画好きな人は、次はどんな作品に出会えるかを楽しみにしています。ネットにこれだけ情報があふれていても、一瞬の映像が気になることってありますよね。あの少年はその後どうしたのかな? とか。それがちりばめられているのが予告編です。
ストーリーの展開がどうだとか監督がだれとかではなく、「この映画、どうしても見たい」と思わせてくれる。そうやって見ているうちに本編が近づき、緊張感が高まってくる。映画ファンにとって、予告編はとても貴重な時間なのです。
昔はもっと静かだった気がします。確かにスマートフォンの電源を切るなど、予告編の間にやっておかなければならないことが増えました。最近はお客さんの入れ替えのときから予告編を流す映画館があって、いつからスクリーンに集中したらいいのか分かりにくいのも事実です。
一方で映画館の料金はどんどん高くなっていて、一部では1800円から1900円に上がりました。そんな時代だからこそ、予告編を含めた時間を大切にしたいです。
[NIKKEIプラス1 2019年7月27日付]
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