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ブックコラム

イノベーションを生む読書 ビジネスに効く先端図書館 「六本木ヒルズライブラリー」運営・熊田ふみ子氏に聞く

2019/8/14

ライブラリーカフェ

たまたま出合う本に発想を刺激されることもありますから、型にはまらないやり方をあえて採用しています。私たち自身は「新刊本を中心にそろえている“本のセレクトショップ”」とも称しています。「グレートブックスライブラリー」という一角は、四方の壁の天井から床までが書棚になっています。文字通り本に囲まれた環境で、くつろぎながら読書ができます。

■金曜の夜に「ブレスト!」

――会員向けのセミナーやイベントが活発なようです。

本はあくまで学ぶための手段。対面で討論する機会や、意見を交換する場を大切にしたいと思っています。セミナーに関しては世の中の森羅万象を扱います。7月は「世界情勢」「移民集団」「大人の図工」などを取り上げ、週2回のペースで開きました。無料のものと有料のものがあり、会員限定のイベントや会員以外が参加できる催しもあります。

グレートブックスライブラリー

最近、力を入れているのは、スピーカーと参加者がフラットに一体となって智恵を深めるミーティングです。「金曜の夜は本気のブレインストーミング!」と銘打って、夜7時から1時間30分の「座談」を開いています。申込者には事前に「問い」をお伝えします。イベント当日までに参加者に考えてきてもらうための材料です。当日は始まる前に各人の「問い」に対する考え方を、全員で共有します。ファシリテーターの進行のもとでブレインストーミングや議論を行い、最終的になんらかの気付きを得ることが狙いです。

ここでも幅広いジャンルを取り上げています。朝比奈一郎氏(青山社中筆頭代表・CEO)と「これから日本は何で食べていくべきか」を考える、塚田有那氏(編集者)と「AI時代の想像力」について考える、木村宗慎氏(茶人)と「歴史、伝統、文化の嘘」を考えるなどです。

そのほかのネットワーク活動としては、自発的に立ち上がった13の「メンバーズ・コミュニティ」があります。ディスカッションやワークショップを通じて、サークル活動のように学びと交流を深めています。「映画の会」「武術研究会」「デザインについての研究会」など、対象は特に本にこだわってはいません。

――どの活動も、幅広いジャンルを網羅しています。議論に加わるにはベースとなる教養を読書で身につける必要もありそうですね。

オールジャンルで「個人が力を伸ばしていくための本」「人生をより豊かに生きるための本」「新しくて、難し過ぎず軟らか過ぎず、面白い本」という視点で毎日本を購入しています。その中から「今読むべき新刊書籍12冊」というスタイルで毎月お薦め書籍を公表しています。

広い意味での「ビジネス」にフォーカスしたライブラリーですが、会社組織からは離れてあくまで個人として利用していただいています。「組織」から「個人」へという時代の変化にマッチしている点が、支持されている大きな要因だと思います。今年で開設から16年。この場所で生まれたアイデアやネットワークから、起業や新ビジネスが幾つも生まれています。

■リアルな交流に価値

開設したころはネット・ベンチャーが次々と立ち上がり脚光を浴びる時代でした。10年代の前半までは、インターネットやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)でどう発信・交流するか、への関心が高かったと思います。今は「オフラインで交流する場所を探している」といった声がより多く聞かれ、リアルな場の交流が重視されていると思います。ネットワークを構築するための「メディア(媒体)」として、ライブラリーという存在に関心が高まっていると感じます。

熊田ふみ子
森ビル・森アーツセンター・アカデミーヒルズ ライブラリー事務局課長
1966年広島県生まれ。お茶の水女子大卒。外資系アパレルを経て2002年に森ビル入社。アカデミーヒルズ事業の運営を担当する。筑波大学大学院博士課程(ビジネス科学研究科)在籍。
【ライブラリーの概要】
・所在地   六本木ヒルズ森タワー49階
・開館時間  7:00~24:00
・蔵書    約1万2000冊、和洋雑誌40誌
・メンバー  約3000人
・会費    月会費 9000円(税別)
・サイト   会員制ライブラリー

(若杉敏也)

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