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白河桃子 すごい働き方革命

男性育休必須化から3年 リクルートの女性が変わった 清水淳リクルートコミュニケーションズ社長(上)

2019/7/31

清水社長自身も1カ月の育児休暇を取った経験がある

白河 フランスの研究でも、リモートワークは週2日くらいが適正だという結果が出ているそうです。女性の働き方や意識の変化についてもう少しお伺いしたいのですが、「時短」を早めに切り上げてフルタイムに戻る人は増えていませんか。

清水 数字として比較できる調査はしていませんが、子どもを産む社員が増えているのにもかかわらず、時短制度を利用する率が減ったと聞いています。むしろ、リモートワークを活用して子育てと仕事を両立するのが当たり前になってきたことで、復職社員の実質的な労働時間は増えているほどです。

■ワーキングマザーが管理職として活躍

白河 おそらく、「時短にしなくても、リモートもあるし、社内の風土も変わってきたから、フルタイムのままで復帰できそう」という感覚を持てるようになったのでしょうね。女性管理職比率にも変化はありましたか。

清水 2010年ごろには女性マネジャー比率が20%を切っていましたが、今では37~38%で安定してきています。伸びた理由として、ワーキングマザーが管理職として活躍するようになったという背景があります。時短のまま昇進してマネジャーになるケースも珍しくありません。

白河 私が10年ほど前に研修でおじゃましていた頃には、25歳の女性社員から「仕事以外のことを考えてもいいんですね」と驚かれたり、「ライフイベントのことは考えないようにしているので、言わないでください」と戸惑われたりしたものですが、隔世の感がありますね。

清水 今はだいぶトーンが変わってきていると思います。先日、地方の支社で働く女性社員たちの声を拾ってきたのですが、「子どもが熱を出した時のサポートがとても助かる」と言われました。これは男性育休必須化と同時に始めた制度で、就学前のお子さんの疾病時に上限2万円・回数無制限の実費支給をするといったものです。病児シッターを利用できる選択肢が増えるだけで、働き続けるためのハードルが下がる。会社がやるべきことは、選択肢を増やすことなのだとあらためて感じました。

白河 選択肢がいくつもあると分かっていたら、将来も前向きに描けそうです。同時に、女性社員側のニーズもより具体的になってきているのですね。こういった女性の意識の向上には、「男性社員が育休を取るようになった」という変化も影響していると感じますか。

清水 少なくとも、一つの安心材料にはなっていると思います。

白河 素晴らしいですね。最近、機関投資家に提供される非財務情報のうち「ジェンダー投資」のスコアとして注目されているのが、「男女が平等に子育てに参加できる環境を整えているか」という項目です。面白いのは、女性にとって、育児に参加するのが自分のパートナーではない同僚男性であっても、キャリアの安心感につながるということ。これはアクセンチュアの調査で報告されていました。つまり、職場においては「ライバル」である同僚男性と平等であることが重要なのだなとふに落ちました。

清水 我々としてはそこまで意図したわけではないのですが、結果的にそういった効果もあるのかもしれないですね。今のお話に関連すると、この男性育休必須化を打ち出した当初、「なぜ会社がお金を負担してまで、男性の育休推進を? 配偶者が他社社員の場合、もったいないと思わないのですか」と質問を受けたことがありまして。非常に意外で、なぜそういう感覚を持つのか不思議でしかありませんでした。なぜなら、我々にとってこの制度のゴールは、育児参加でも働き方改革でもなく、あくまで組織として業績を上げるためのもの。当社の男性社員の配偶者が他社にお勤めであったとしても、当社の業績向上のために必要な施策なのですから、もったいないという発想にはなりません。

白河 実際のところ、女性社員比率が高い会社は「負担が多過ぎる。男性側の会社もしっかり子育て支援をやってほしい」と悲鳴を上げています。社会全体のためには、御社のような取り組みはどんどん広げていただきたいですね。

(次週公開の後編では社長自身の育児休暇経験、育休取得後の評価やキャリアの問題、業績や社員のパフォーマンスへの影響などについてお伺いします)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(ライター 宮本恵理子)

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