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相続した家 「登記」怠るとこんなトラブルが

2019/7/27

写真はイメージ=PIXTA

政府が「相続登記」を来年の法改正により義務化する方針だとの記事を読みました。所有者不明の土地・家屋の増加を防ぐのが狙いらしいですが、そもそも相続登記とは何ですか。私たちの生活にどんな影響があるのでしょうか。

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相続に伴い不動産の所有名義を変更する手続きを相続登記といいます。例えば親が亡くなり、その土地や建物を子どもが相続した場合、法務局に申請し、不動産登記簿上の名義を書き換えます。

しかし現在は法的義務がなく申請期限もありません。名義を変えなくても直ちに不都合が生じるわけではありません。地方にあり資産価値が低い不動産などは親から引き継いでも名義を変えずに放置する人がいます。登記費用や固定資産税などの負担を嫌って登記を怠る例もあります。

何世代にもわたって相続登記が先送りされた結果、所有者を特定できない土地や家屋が全国で増えています。面積を合計すると九州を上回るとの試算もあり、政府が対策に乗り出しているのです。

名義を変更しないといつか困った事態になりかねません。ある家族のケースをみてみます。父の死後、自宅を長男が所有して高齢の母と一緒に住むことになりました。次男と円満に話し合った結果であり、遺産分割協議書は作らず相続登記もしませんでした。

■売却や境界確定に支障

ところがある日次男が急死したことで残された妻が先行き不安となり、自宅の一部を分けてほしいと要求するようになりました。妻には法定相続割合に応じて受け取る権利が生じましたが、長男は要求を断り争いになりました。

もしも長男が相続登記を済ませ、自宅を自分の名義に変えていたらこんな問題には発展しなかったはずです。所有権が移転済みであることを登記簿によって証明できるからです。

何らかの理由で家を手放す際にも問題が起きそうです。名義が故人のままだと売却したくても契約書を作ることさえできないからです。自宅を担保に融資を受けたいときも同様です。故人名義では銀行は金を貸してくれません。

相続登記では遺産分割協議書の添付が必要になります。全ての法定相続人が遺産の分け方を話し合って署名し、実印を押すという大変な手間です。年月がたてば親族の範囲が広がって法定相続人の数が増えるのが通常です。そうなれば面識さえない相続人だらけという状況になり、協議書を作るのは難しくなります。自分の世代はまだしも、子や孫の世代になると話し合いは困難になるでしょう。

隣近所に迷惑をかけることもありえます。お隣が土地の境界確定を求めてきたとき登記名義が故人のままでは直ちには応じられません。税金や修繕の負担を背負いたくないからと相続登記をしない人もいますが、所有者不明土地がこれ以上増えないよう相続登記は義務化される方向です。

[日本経済新聞朝刊2019年7月20日付]

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