海外ブランド各社が日本市場の開拓を一段と加速している。ミレニアル世代を意識した話題づくりや顧客との新たな関係構築を進めているのが特徴だ。ニューヨークを軸に高級皮革製品やライフスタイル製品を展開する米ブランド、コーチの世界戦略でカギを握るのはデジタルの活用だ。コーチの社長兼最高経営責任者(CEO)、ジョシュア・シュルマン氏に手応えを聞いた。
■ファッションに敏感なミレニアル世代と接点設ける
――2019年の重点施策は何ですか。
「今年のミッションはとにかく物事を加速させること。商品、店舗、デジタルの3分野でイノベーションを加速する。78年の歴史を持つコーチの商品はこれまで女性向けのハンドバッグ、男性の革製品というイメージが強かった。しかし最近5年間はクリエーティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァースを中心に、ライフスタイルのあらゆる場面に対応できる、ファッション性を重視した新商品を相次ぎ提供し、成功を収めている」
――コーチの親会社のタペストリーはブランドの買収でコングロマリット(複合企業化)を進め、自社でeコマースやデジタル・ソーシャル部門を推進しています。
「当社の強みは顧客層が全世代に広がっていること。しかもカスタマーベースでミレニアル世代が成長している。ファッションに敏感な彼らを攻略するにはさまざまな接点を設けることが重要だ。デジタル活用においては、コミュニケーションツール、販売、ブランドからの発信と複数層にわたってマルチメディア化するという考えだ」
■LINE上でリアルタイムで会話し欲しい商品を提供
――日本市場の開拓をどう考えますか。
「コーチが独自に開発したクライテリングツールがある。これは最新のコレクションや製品情報に関して、タイムリーに双方向のコミュニケーションを取ることで、顧客一人ひとりとの関係を一対一で緊密化するためのものだ。販売員が使用するLINEがベースになる。現在50店舗での試験運用を実施している。LINE上で、顧客一人ひとりにコーチの販売員が専属のファッションアドバイザーとして、カスタマイズされたサービスを提供することができる。8月からは日本国内全128店舗で実施する」
「まず顧客がこのツールに登録すれば販売員と双方向で情報をやり取りすることができる。リアルタイムで会話をしながら顧客がほしい商品を提供できるようになる。電話や手紙よりも便利で確実だ」