知人は友人にあらず 定年シニア、老後孤独に備えよう経済コラムニスト 大江英樹

写真はイメージ=123RF
写真はイメージ=123RF

老後の不安のうち最も深刻なのが孤独だということを私はいつも主張しています。したがって定年後、孤独に陥らないようにするためには人とのつながり、すなわち友人の存在が極めて重要と言ってよいでしょう。私が企業に依頼されて50代の社員向けセミナーでこのことをお話しすると、みなさんうなずいておられるのですが、その一方で「それはその通りだけど、私にそんな心配は不要だ。友達はたくさんいるし、知り合いも多い。毎年年賀状は何百枚も出しているのだから」とおっしゃる方がいます。

現役時代の付き合い、大半は疎遠に

かく言う私も現役時代はそう思っていましたし、実際に年賀状も500枚以上を出していました。ところが年賀状の9割以上は同じ会社の人たちや親戚などのように半ば儀礼的に出している先がほとんどでした。つまりそれらの人たちは友人ではなく、単に知っている、あるいは一緒に仕事をしたことがあるというだけの知人にすぎなかったのです。現に私は会社を定年退職して既に7年が経過していますが、前の会社にいた仲間で今でも交流を続けているのはごく数人しかいません。それはお前に人徳がないからだろうと思われるかもしれませんが、実際に退職した友人に聞いてみても同じような状況のようです。つまり今まで友人だと思っていたのは単に知人にすぎなかったということなのです。

2019年3月に101歳で亡くなられた生活評論家の吉沢久子さんも、著書「前向き。」で「知人と友人は違う」ということをおっしゃっています。吉沢さんはこのように書かれています。「友人と知人は別だと考えています。知り合いではあるけれど、それほど深いお付き合いをしていないなら知人、お互いのことを理解し、思いやれるのが友人ではないでしょうか。知人は何人いてもいいし、普通にお付き合いをするのがいいと思いますが、本当の友人はそんなにたくさん持てるものではありません。心が通い合った数人の友人がいれば、たとえ一人暮らしでも孤独ではありません」

以前、本コラムでも「定年後のシニアなら 独りで過ごす時間が多くてもいい」(2018年2月8日付)ということを書いたことがあります。いくら知人が多くても、それだけでは孤独の解消にはなりません。気楽に付き合うことができ、本音を言える相手が何人かでもいれば、年賀状だけでつながっている何百人の知人よりも価値があると言ってよいでしょう。

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし