5%増か、5万円増か 数字の使い方で仕事は速くなる堀口智之著『デキる大人になるレシピ 明日の会議ですぐ効く 伝わる数字の使い方』

若手社員や、数字を得意でない人が勘違いをしやすいものの一つに、「前年(月)増加率」があります。例えば、100万円の売り上げだったものが150万円になったときに、つい「150%売り上げが上がりました!」と言いそうになることはありませんか?

「150%アップ」というのは、今の売り上げを100%と考えて、さらに「150%分増加」すること、つまり、売り上げが2.5 倍になった、ということです。
(「要注意! 売り上げ増の説明方法」 44ページ)

この場合「50%上がりました」または「前年(月)比150%の売り上げになりました」という言い方が正解です。また、使われている数字そのものにも注意は必要です。

ある営業の方に「利用者が300 万人を超えまして…」と説明されたので詳しく聞いたところ、「過去の月間利用者数の累計」でした。
(「どのくらいの人が利用しているの?1」 70ページ)

「300万人」が累計なのか、直近の1カ月での数字なのかで、実態把握がずいぶん違ってしまいますね。ビジネスでも日常生活でも、実際には「延べ」や「累計」であるのに「正味(実数)」のように見せているケースは多々あります。数字だからといって即座にうのみにするのではなく、読み取る側にも「このデータは正確か?」と見極める姿勢が必要です。私たちは発信する側、受け手側、どちらの立場にもなりえます。だからこそ、こうした表現方法の手段と性質を知っておくことが大切です。

■もっと「数字」で判断を

状況を正確に判断する、確実にクライアントに伝える、上司を説得する根拠にする――数字は、さまざまな場面で活躍します。著者は次のように主張します。

「数字で物事を考える」とは、合理主義のように、まるでお金ですべてを判断するかのように思われがちですが、大きく違います。数字で物事を考えるから安心できるのです。あなたの判断軸に「数字」をプラスするのです。
(あとがき 157ページ)

勘や経験、その人の思いや情熱による判断だけでは、どうしても不確実な部分が残ります。そこで、数字による裏付けが必要になります。検証をして、よくない数字が出てきたとしても大丈夫。「そのマイナスを取り戻すように計画を立てればいい」という著者の言葉に勇気づけられます。

本書では、四則演算や分数、電卓の使い方、円・ドル換算といった、数字や計算の基本を「ビジネスに生かす」という観点から見直します。少し数字を意識するだけでも、曖昧な報告がなくなったり、現状把握が楽にできたりなど、明日からの仕事が変わるはず。数字に強くなりたいけれども、何から始めたらいいのか分からない――そんな人へお勧めしたい一冊です。

◆編集者からひとこと 日経HR・コンテンツ事業部編集部・木村茉莉子

統計学がブームになったり、大人の学び直しの一つとして中学・高校の数学が注目を浴びたり……。そのような時代に、そもそも数字を見ることすらあまり好きではない、典型的な“数字アレルギー”の私が、著者の堀口さんの「データセンス」(数に対する感覚を鍛える)という考え方に出合ったのが、本書が生まれるきっかけでした。学校の数学の苦い記憶を振り払って、仕事や日常生活で触れる数字に対する感覚を研ぎ澄ませていけば、誰でも数字に強くなれるのではないか? と今は感じています。本書が、若手社員のみならず、数字に強くなりたい! と思うすべての人の役に立つことを願っています。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が、20~30代を中心とする若いリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

デキる大人になるレシピ 明日の会議ですぐ効く 伝わる数字の使い方

著者 : 堀口 智之
出版 : 日経HR
価格 : 1,296円 (税込み)

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