では利益はどこから出るのか。
自動車ディーラーの利益は、実は点検や修理の費用から出ています。
自動車ディーラーが生き残るためには、たくさんのユーザーに定期的にメンテナンスに来てもらう必要があるのです。
だから自動車の新車販売は、メンテナンスにきてもらうための見込み客作りに他なりません。
だとすると、見込み客は多いほうがいいですよね。
そのために、自動車ディーラーはどんどん新しい車を新しいお客さんに売ろうとするわけです。
そのように理解してみれば、自動車ディーラーが求めるものは明らかに「売り上げやシェアの拡大」ということがわかります。
そしてそれらに直接的に貢献してくれる営業マンたちは「キャリアアップ」を求めて集まってくるのです。
だからインセンティブなどがしっかり反映された市場報酬型の制度が導入されているとすれば、会社としては正しい判断なわけです。
部門によって仕組みを変えるほうが良い場合もある
このように会社全体のことを客観的に見ることができればよいのですが、多くのビジネスパーソンは自分の周囲を見て物事を判断します。だからこの場合、自動車ディーラーの経理担当者であるあなたは「うちの会社は従業員の気持ちがわかっていないひどい会社だ」と思うようになってもおかしくありません。
一方、会社によっては、このような不満にしっかり対応しようとする例も増えています。弊社セレクションアンドバリエーションが設計した自動車ディーラーの人事の仕組みでは、営業部門と管理部門、それぞれの制度を別個のものとして設計しました。
営業部門に対しては「市場報酬」型の仕組みを導入し、管理部門に対しては「年功報酬」型の仕組みを導入したのです。そうすることで、営業部門はとにかく売ることが好きな人をどんどん集め業績を高めていきました。
管理部門は安定的に働きながら業務の品質や正確さを高め、営業部門が走りすぎないようなけん制機能を持ちました。お互いに働きやすい環境を得つつ、会社も成長できる仕組みを構築し、運用しているわけです。
変わりつつある会社の仕組み
ほとんどの会社は、複数の職種の人たちで成り立っています。
製造業なら「研究開発」「生産」「物流」「営業」「管理」などの人たちがいるでしょうし、小売業なら「仕入れ」「物流」「販売」「管理」などのように、やはり複数の職種の人たちが働いています。
これらの人たちは職種によって会社から求められるものが違う場合があります。また、働く側も異なるキャリア意識を持っていたりします。
だとすると、同じ会社とはいえ同じ人事の仕組みではうまく機能しない場合があることがわかってきました。