2019/7/24

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国交省の書式公表以降、DIYブームが徐々に浸透していく過程で、建物自体を安全に使用するためのもろもろの法規について、現場がきちんと認識していないケースが散見されるという話がしばしば聞かれるようになりました。

防火対策に「内装制限」

実は、建物には防火対策上の「内装制限」という規定があり、一定の条件のもとでは燃えにくい材料を使用しなければならないなどのルールがあるのです。借り手や大家、不動産管理会社や不動産仲介業者は、こうしたルールについて必ずしも詳しくはないため、危険なDIYが知らず知らずになされてしまっているというのです。

このルールは、建物の用途(居宅か共同住宅かなど)や構造、DIYを行いたい場所や所在階などによって適用が異なるだけでなく、消防法なども絡んでくるため、非常に複雑で分かりにくいものになっており、一般の人が理解するのは難しいといわれています。

このため、自分なりに調べて対応しようにも、正確に理解できるとは限らないという問題があります。建築士や現場で不動産を管理している専門家らの中には居住の安全や安心が損なわれたり、法的な不適合が生まれたりする危険性について、問題意識を持つ人が増えてきました。

こうした問題意識を持つ専門家らが集う一般社団法人HEAD研究会が今年5月、誰もが簡単に安全なDIYを行えるような「賃貸DIYガイドライン」を公表したのです。ガイドラインは同研究会のホームページ(http://www.head-sos.jp/)で無料ダウンロードできます。

フローチャートで内装制限の有無を確認

このガイドラインの特徴は、何といってもフローチャートで内装制限の有無が確認できることです。DIYをしたい建物の種類、構造からフローチャートにしたがってチェックしていけば、内装制限がかかるのかどうかがすぐわかるようになっています。

賃貸DIYガイドラインより抜粋

さらに、内装制限がある場合はどんな部材を選び、どのような施工をすればよいのかといった事例を写真付きで載せているので、DIYの初心者の人にもとても使いやすくなっています。

大家向けの提案書や国交省公表のひな型を賃貸借契約書に反映できる書式例も掲載されており、これ一冊で賃貸DIYのほとんどが分かるようになっています。

このガイドラインを借り手、貸主、仲介業者、不動産管理会社が契約時にしっかり確認すれば、「何ができて、何ができないのか」「どういう安全が担保されるべきなのか」といったことが明確になります。

結果として「住む人にとっての自由」と「大家にとっての安心」との間に横たわる課題が解消され、よりよい住空間が形成される一助となるのではないかと思います。

田中歩
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。