データ本位通貨リブラ、新システムの予感(平山賢一)東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長

このデータは、蓄積されればされるほど、データそのものが価値を有するようになります。

モノだけでなくヒトにおいても、多くの人々の嗜好データは、価値を持ち始めてきています。このデータはGAFA等のプラットフォーマーに偏って存在するようになってきているため、その中でも希少性の高いデータは、価格も上昇傾向で推移しています。逆に、社会にあふれかえっている家電製品といったモノの価格は上昇しにくくなっています。「モノはディスインフレ化し、データはインフレ化しつつある」と言えそうです。つまり、カネで計測したモノとデータの価値は、乖離(かいり)しはじめているのです。

プラットフォーマーによる通貨「リブラ」

ところで、価値を計測するモノサシの役割が付与され、それ自身が価値を持ち始めたデータを抱えたプラットフォーマーが、決済ツールも提供するというのが仮想通貨「リブラ」です。各金融当局から実現可能性に対する疑問が投げかけられているものの、(1)価値尺度(2)価値貯蔵(3)決済――という、通貨の3機能が充足されつつあることから、新たなる通貨の誕生につながる可能性もあり、頭ごなしに否定すべきではないと考えます。

データを背景とした決済通貨であると考えれば、若干飛躍はありますが「金本位通貨」「信用本位通貨」に続く「データ本位通貨」と位置づけることができます。

新しい通貨の可能性

実際には、各国の国債(通貨)を仮想通貨発行の見返りに購入して、通貨の裏付けにするため「通貨バスケット本位制」ということになりますが、分散効果がはたらくため、単一通貨を保有するよりも価値の保全が期待できます。従来の暗号資産がジェットコースターのように価値変動するのに対して、安定感があると言えるでしょう。自国通貨だけを持っていれば、自国通貨安による購買力の低下のリスクも抱えるため、むしろ好都合かもしれません。また、巨大なプラットフォームを基にグローバルな決済が可能になるため、利便性は格段に高いと言えるでしょう。

一方で、利便性の見返りにセキュリティーとプライバシーが犠牲になる可能性が指摘されているように、乗り越えるべき課題は残されています。また、既得権益を持つ通貨発行主体が、国際決済通貨の地位や通貨発行国のシニョレッジ(通貨発行益)を容易に放棄するとは考えられません。ただ、現在の中央銀行の信用を裏付けにした通貨システムは、その維持に要する負荷は非常に高いという難点も抱えているため、建設的にシステム維持コストの低い通貨システムを考えていくべきだと言えるでしょう。そもそも、グローバル金融危機以降、各中央銀行がベースマネーを急拡大させ、カネを金融市場に供給したことに対する批判も強く、信用本位通貨システム自体にも綻びが見え始めているのですから……。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
平山賢一
東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長。1966年生まれ。横浜市立大学商学部卒業、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。東洋大学経済学部非常勤講師。30年にわたり内外株式や債券をアセットマネジメント会社で運用する。著書に「戦前・戦時期の金融市場」「振り子の金融史観」などがある。
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