恵 どんな人が特例の適用対象になるの?
幸子 自宅の土地の場合、相続するのが配偶者か同居していた親族が対象よ。配偶者も同居親族もいなければ、相続開始前3年以内に自分の持ち家などに住んでいなかった別居する親族にも適用されるわ。仕事の都合などで賃貸住宅に別居していても、持ち家がなければいずれ親の自宅に住む可能性があるからよ。こうした別居親族のことを「家なき子」と呼んだりもするわ。
良男 確か、家なき子って特例の適用が厳しくなったんじゃなかったっけ?
幸子 この特例は、自宅の評価額を大きく下げられることから、強引に基準を満たして家なき子になろうとする人がいたの。2018年4月の改正前の規定では、相続人またはその配偶者の持ち家に住んだことがないことが条件だったわ。この条件にあてはまらない人の中には、例えば自宅を持つ子ではなくさらにその子ども、つまり孫に遺言書を書いて遺贈し、孫が特例を受ける形にして相続税の負担を逃れる人もいたのよ。
良男 そんなことまでする人がいたのか。
幸子 改正後は3親等以内の親族などの持ち家に住んでいたことがないことも条件に加えたの。このため、親と同じ家に住む孫に遺贈する方法は使えなくなったわ。また「相続した家を過去に所有していたことがない」という条件も付いたので、例えば自宅を親に売却して賃料を払って住み続け、親の死後に相続して家なき子の特例を受ける方法もできなくなったの。
良男 小規模宅地等の特例について、ほかに注意しておくべき点は?
幸子 同居親族や家なき子は、相続開始の翌日から10カ月間は自宅を売却できない点ね。相続税の申告は相続開始から10カ月以内だから、それまでに売ってしまうと住み続けたことにならないの。
恵 そういえば、会社の先輩の両親が相続対策で所有する土地に賃貸アパートを建てたと聞いたわ。どうして節税になるのかしら。
幸子 土地を他人に貸していると使い勝手が悪いとみなされ、その分評価額を下げられるからよ。公示地価などで1億円と評価された土地に木造の賃貸アパートを建てて満室になった場合で計算してみるわね。まず、相続税の土地の評価額は路線価が基準になり、時価の8割程度になるってこの前、説明したわよね。さらにこの土地にアパートを建てると「貸家建付地」となり、住人が利用している割合を差し引けるの。