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芸人の「闇営業」法的な問題は? 暴排条例に抵触も 弁護士 志賀剛一

2019/7/18

(2)については、法務省が2007年に公表した反社会的勢力の定義によれば「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人」となっていますので、振り込め詐欺グループなどはこれに含まれますが、例えば東京都の暴排条項では「暴力団員又は暴力団もしくは暴力団員と密接な関係を有する者」とされており、振り込め詐欺グループが暴力団員等でない場合には暴排条例の対象にはなりません。

しかし、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)には「情を知って、犯罪収益等を収受した者は、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」と規定されています。ギャラが振り込め詐欺によって得た利益から払われており、所属芸人がこれを知っていた場合には(本件では「知らなかった」とのことですが)、この罪に問われる可能性もあるのです。

■所属芸人、税務申告を修正

さらに脱税の可能性も懸念しています。もちろん、脱税となれば法に触れる行為です。

ギャラ・謝礼の支払者が暴力団関係者や振り込め詐欺グループであることから、収入として申告されていないのではないかと予想していたところ、本稿を書いている最中に、所属芸人たちは税務申告を修正したとの報道に接しました。やはり当初は申告されていなかったようで、今回は「申告漏れ」と理解します。

吉本興業のようなスタイルですと、所属芸人は個人事業主ですので、会社を通していてもいなくても、芸を提供して得た収入は事業所得になります。

謝礼の額は報道によれば最大100万円でした。結構な額ですよね。ただし、個人から個人へ支払われたのであれば「年間110万円以下なら贈与税がかからないのではないか」という見方もあります。しかし、報道によれば所属芸人たちは実際に芸を提供しており、払われた金銭がその対価でないとは言い難いでしょう。また、贈与は親族や知人間でなされるものです。所属芸人が100万円もの贈与を認めることは、イコール相手方との親密さを認めることになってしまいます。

さらに「源泉徴収されていれば問題ないのでは?」との声も聞きます。確かに、所得税法により「芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金」は源泉徴収の対象になると定められています。

仮に源泉徴収が行われていたとしても(私はその可能性も低いと思いますが)、源泉徴収は支払金額の100万円まで10.21%、100万円を超える場合は20.42%が天引きされ、翌年の確定申告で精算するというにすぎず、課税所得が高く、天引きされた分を超える税率で課税される人については、源泉徴収では足りず、別途申告所得税が発生します。大物芸人だと、源泉徴収の額では到底、納めるべき所得税に足りないものと思われます。

■すべてのタレントとの契約を書面にすべき

日本経済新聞の7月13日付朝刊によると、大崎会長はインタビューに「今回のことがあったので、全社員、全芸人と共同確認書を交わす。これで反社との決別を改めて確認、徹底したい」と答えています。ここまでやるのであれば、いっそのことすべてのタレントとの間の契約を書面で締結し直し、明確化を図ったらどうかと思うのですが、いかがなものでしょうか。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。

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