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サカナクション6年ぶり新アルバム CDは最後かも

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2007年のデビュー以降、ロックとダンスミュージックの融合を掲げ、数々のヒットナンバーを生み出し、メジャーシーンの第一線を走り続けてきたサカナクション。彼らが6月19日に新アルバム『834.194』をリリースした。実は、13年に発売した前作『sakanaction』以来、オリジナルアルバムとしてはなんと約6年ぶりの作品。なぜそこまでの長い期間、アルバムを出さなかったのか? ライブの台頭やCDからストリーミングへの移行といった、変化し続ける音楽業界の中で、フロントマンの山口一郎が考え続けてきたことを聞いた。

「僕自身、音楽を聴く手段はストリーミング中心になりました。自分自身のリスニングスタイルを考えても、単純にただCDをリリースして、そこだけでビジネスしていこうという考え方はもう違うのかなと。世界を見ても、いまだにCDが売れているのは日本だけだし、ある意味それはCDを買って応援したいと思ってくれるファンに甘えている部分がある気がします。

昨年発売したベスト盤やライブDVDなどがそうですが、近年の僕たちは、パッケージを出すのであれば、『音楽ソフトのプロダクトとしての価値』を高めるために、ジャケット写真などにこだわってきました。例えばアーティストグッズのTシャツやタオルって、日常でも使えるじゃないですか。CDやDVDも音楽を聴くためだけに買うのではなく、作品の一部として、アートや本を買うような感覚になってもらえればと思い、取り組んできました。音楽業界が大きく変化するなかで、何をリスナーに向けて発信するべきなのかを葛藤し続けた6年でしたね。それに区切りを付ける意味でも、CDという形態をメインで出すアルバムとしてはラストになるかもしれないと思っています」

ドロップアウトも考えた

アルバムを出さなかったこの約6年間、様々な葛藤を続けるなかでサカナクションは、代名詞とも言える踊れるロックチューンではなく、あえて内省的なメロウナンバーをシングルでリリースする時期もあった。ニューアルバムには、それら2つの方向性を反映した楽曲を収めている。

「この6年間、音楽業界の中で自分たちが伝えたいものを伝えられなかった葛藤、自分たちができていなかったことを改めて知ってまた動き始めたこと、そしてファンとの関わり方など、全ての思いを凝縮したのがこのアルバムです。

なぜこうなったかというと、大きな転機がいくつかあったからです。実は、13年に前作のアルバム『sakanaction』を出すにあたり、2つの目標を立てていました。それは「20万枚のセールス」と「アリーナライブ2万人の完売」。そのためにシングル曲では、『僕と花』(12年)や『ミュージック』(13年)でドラマのタイアップをやったり、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)では、あえて楽器を持たずに一列に並んでMacで演奏するなど、戦略的に話題を仕掛けることで両方を達成できました。

そして次の目標として、さらにセールスや動員を伸ばそうと思った時に、これまでのやり方では無理だと気付いたんです。音楽界における政治的な力学も必要だったし、自分たちの意図しない楽曲を作っていく必要もあった。でもそれは同時にファンへの一番の裏切りになってしまう。

そこで、人に聴かれることをあまり意識せず、自分たちが作りたいものを出して、音楽のメジャーシーンからドロップアウトしようと考えました。それが今作にも収録する、『グッドバイ/ユリイカ』(14年)です。あのタイミングで僕らに求められていたのは、『ルーキー』(11年)のような、フェスうけするBPM140ぐらいのアップテンポで盛り上がる曲。しかし僕らはあえてそうしなかった。同じ年にもう1枚出したシングル『さよならはエモーション/蓮の花』も同じトーンの楽曲で。結果的に一部のリスナーが離れましたが、その分ファンが濃くなったように思います。

そんな時に、映画『バクマン。』の主題歌と劇伴のお話をいただきました。その頃は、キャッチーでポップなものを作ることから一度離れて、本質的でパーソナルな部分に行こうとしていた時期。しかし『バクマン。』と出合い、『従来とは違う形でのキャッチーさやポップさを、本当に追求できていたんだろうか?』と改めて考えるようになって。もっと自分たちの考えるポップの間口を広げれば、そこにたどり着けるのではと試行錯誤して、『新宝島』(15年)が生まれました。

そこから、僕らのストーリーも変わっていったんです。ポップを追求した『新宝島』という入口を作ったからには、入ってきてくれたリスナーに対して、受け皿というか出口をちゃんと作ってあげないといけない。自分たちがハブとなることで、音楽、映像、アート、ファッションなど、様々なクリエイティブを伝えられる存在になろうと。きっとそれは、100万枚、200万枚のCDを売ることよりも、現代的な音楽シーンへの爪痕の残し方になるんじゃないかと思ったんです。

その具体的な取り組みとして15年から、自主企画イベント『NF』をリキッドルームで始めました。イベントでは、僕らがレコメンドするという形で幅広いジャンルの音楽を流したり、イベントを一緒に作る映像ディレクターやスタイリストとも直接交流できる。音楽だけではなく様々なカルチャーに触れられる『サロン』のような場となっています。その頃から、マジョリティーにおけるカウンターカルチャーとして、もっとマイノリティーな活動をしたいと思うようになっていきました」

"東京"と"札幌"がテーマ

「本当はこのタイミングでアルバムを1枚出して、そこまでのストーリーを完結させておくべきでした…(苦笑)。ただ、レコーディングの時間がうまく取れなくて。その後も、『多分、風。』(16年)などアッパーな曲を作って、リスナーの入口を広げていったんです。

今回のアルバムは2枚組になるのですが、1枚目は、作為的に外に向けて発信していこうという要素が強い作品を集めて『東京』というコンセプトに。2枚目は自分たちのために作ろうと考えていた、デビュー前の札幌時代のスタンスに近い作品を集めて「札幌」というコンセプトにしました。

1枚目には、踊れるような要素もあるポップナンバーの『新宝島』『多分、風。』といった楽曲が入っています。ソフトバンクのCMソングにもなっている『忘れられないの』もそう。『モス』という曲では、山本リンダやグループサウンズといった日本の歌謡サウンドに、70年代から80年代に活躍したアメリカのロックバンドであるトーキング・ヘッズのテイストを加えています。

一方、2枚目には、『グッドバイ』『ユリイカ』『さよならはエモーション』『蓮の花』といった、心にしみるタイプの楽曲たちを入れました。『ワンダーランド』はダンスミュージックですが、(90年代初頭にイギリスではやった)シューゲイザーというノイジーで耽美的なダウナーサウンドを混ぜたらどうなるだろう?と挑戦した作品です。

また『茶柱』は、お茶の世界の達人との出会いによって生まれた1曲です。これまでは自分がぶつかった壁や、読んだ本からでしか曲が作れなかったんですが、人との出会いから得たものを、アウトプットすることにも挑めました」

この先、彼らはどういった形で音楽を伝えることを考え、日本の音楽界とどう関わっていこうと考えているのか? そのカギとなるのは「ストリーミング」と「ライブ」だという。

「いろんな音楽に触れられるストリーミングには可能性を感じています。若者たちが『日本の音楽チャートには上がってこないけど、こんないい音楽が何で売れてないんだろう?』みたいな疑問を持ついい機会になる。そしてその音楽の良さを友人に伝えたり、それがきっかけで音楽活動を始めることになるかもしれないですよね。

個人的にはストリーミングを使って、楽曲をMacのOSのようにバージョンアップしてみたいです。今は曲を作ってリリースするとそれが完成品ですが、後から歌詞を変えたものをver.2に、ライブでアレンジを変えたものをver.3みたいにして上げていければ面白いかなと。それぞれ自分が気に入ったところで、バージョンを止めたりもできるわけですし」


「NF」 サカナクションがオーガナイズするDJイベントを軸にした、複合イベント。15年にスタートした。サカナクションに関わるクリエイターやアーティストと共に、音楽や映像、写真、ファッションなどを新しい形で提案している。これまでには、ストリートカルチャーの開拓者・藤原ヒロシや、新進気鋭のバンドD.A.N.、インテリアデザイナー片山正通など、多彩なゲストが登場している。

音楽フェスに対する不満

「またライブビジネスは今後も絶対残るし、大切なものになっていくと思います。音楽フェスもそう。いろんなミュージシャンを見られる入口として、いいきっかけになっていますよね。ただフェスには不満もあって…。それは、若者が初めて見るライブになる可能性もあるので、音楽の本質的な部分をもっと改善してほしい。フードエリアが充実しているだとか、トイレが充実しているとかだけじゃなくて(笑)、音響や照明の設備のグレードを上げたり、一組あたりの演奏時間を長くしたりするといった、音楽をさらに好きになってもらえる環境作りにもっと力を入れてほしいんです。

近年、僕らのアリーナライブは、会場内に300を超えるスピーカーを並べる6.1chサラウンド方式で行っています。フェスで僕たちのことをいいなと思って来てくれたお客さんがそれを体験すると、他のアーティストのライブに行った際に『この違いは何なんだろう?』という気づきにもつながるはずなんです。

今や日本の音楽界では、メジャーとインディーズの垣根がどんどん低くなってきています。そんな中で『メジャーにいる意味があるのか』と言われそうですが、僕は大いにあると思っていて。エンタテインメント側にいるからこそ、音楽シーン全体を変えられる可能性があると思っているからです。音楽にさほど興味のない若者たちにだって、楽曲を届けることができますしね。

僕は未来の音楽にもちゃんと嫉妬をしたくて。そのために、今自分たちに何ができるかということを考えているんです。自分が70歳になった時に、ラジオからすごくいいなと思う曲が流れてきたとするじゃないですか。その後に、実はそのミュージシャンが、サカナクションの影響で音楽を始めたことを知った時に初めて、音楽をやっていてよかったと思えるんじゃないかなって。それが、このとんでもなくひどい音楽業界にとどまる理由の1つかもしれません(笑)」

(ライター 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2019年7月号の記事を再構成]

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