サカナクション6年ぶり新アルバム CDは最後かも

日経エンタテインメント!

この先、彼らはどういった形で音楽を伝えることを考え、日本の音楽界とどう関わっていこうと考えているのか? そのカギとなるのは「ストリーミング」と「ライブ」だという。

「いろんな音楽に触れられるストリーミングには可能性を感じています。若者たちが『日本の音楽チャートには上がってこないけど、こんないい音楽が何で売れてないんだろう?』みたいな疑問を持ついい機会になる。そしてその音楽の良さを友人に伝えたり、それがきっかけで音楽活動を始めることになるかもしれないですよね。

個人的にはストリーミングを使って、楽曲をMacのOSのようにバージョンアップしてみたいです。今は曲を作ってリリースするとそれが完成品ですが、後から歌詞を変えたものをver.2に、ライブでアレンジを変えたものをver.3みたいにして上げていければ面白いかなと。それぞれ自分が気に入ったところで、バージョンを止めたりもできるわけですし」


「NF」 サカナクションがオーガナイズするDJイベントを軸にした、複合イベント。15年にスタートした。サカナクションに関わるクリエイターやアーティストと共に、音楽や映像、写真、ファッションなどを新しい形で提案している。これまでには、ストリートカルチャーの開拓者・藤原ヒロシや、新進気鋭のバンドD.A.N.、インテリアデザイナー片山正通など、多彩なゲストが登場している。

音楽フェスに対する不満

「またライブビジネスは今後も絶対残るし、大切なものになっていくと思います。音楽フェスもそう。いろんなミュージシャンを見られる入口として、いいきっかけになっていますよね。ただフェスには不満もあって…。それは、若者が初めて見るライブになる可能性もあるので、音楽の本質的な部分をもっと改善してほしい。フードエリアが充実しているだとか、トイレが充実しているとかだけじゃなくて(笑)、音響や照明の設備のグレードを上げたり、一組あたりの演奏時間を長くしたりするといった、音楽をさらに好きになってもらえる環境作りにもっと力を入れてほしいんです。

近年、僕らのアリーナライブは、会場内に300を超えるスピーカーを並べる6.1chサラウンド方式で行っています。フェスで僕たちのことをいいなと思って来てくれたお客さんがそれを体験すると、他のアーティストのライブに行った際に『この違いは何なんだろう?』という気づきにもつながるはずなんです。

今や日本の音楽界では、メジャーとインディーズの垣根がどんどん低くなってきています。そんな中で『メジャーにいる意味があるのか』と言われそうですが、僕は大いにあると思っていて。エンタテインメント側にいるからこそ、音楽シーン全体を変えられる可能性があると思っているからです。音楽にさほど興味のない若者たちにだって、楽曲を届けることができますしね。

僕は未来の音楽にもちゃんと嫉妬をしたくて。そのために、今自分たちに何ができるかということを考えているんです。自分が70歳になった時に、ラジオからすごくいいなと思う曲が流れてきたとするじゃないですか。その後に、実はそのミュージシャンが、サカナクションの影響で音楽を始めたことを知った時に初めて、音楽をやっていてよかったと思えるんじゃないかなって。それが、このとんでもなくひどい音楽業界にとどまる理由の1つかもしれません(笑)」

(ライター 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2019年7月号の記事を再構成]

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