サカナクション6年ぶり新アルバム CDは最後かも

日経エンタテインメント!

『834.194』 2枚組からなる今作。札幌時代に作ったという『セプテンバー』は、優しいギターの音色が心地良い“札幌ver.”と、打ち込みサウンドの“東京ver.”を、それぞれのDISCに収録。ジャケットの装丁を担当したのは「ネルホル」(ビクター/完全生産限定盤A ・2CD+Blu-ray・5900円・税別)

そこで、人に聴かれることをあまり意識せず、自分たちが作りたいものを出して、音楽のメジャーシーンからドロップアウトしようと考えました。それが今作にも収録する、『グッドバイ/ユリイカ』(14年)です。あのタイミングで僕らに求められていたのは、『ルーキー』(11年)のような、フェスうけするBPM140ぐらいのアップテンポで盛り上がる曲。しかし僕らはあえてそうしなかった。同じ年にもう1枚出したシングル『さよならはエモーション/蓮の花』も同じトーンの楽曲で。結果的に一部のリスナーが離れましたが、その分ファンが濃くなったように思います。

そんな時に、映画『バクマン。』の主題歌と劇伴のお話をいただきました。その頃は、キャッチーでポップなものを作ることから一度離れて、本質的でパーソナルな部分に行こうとしていた時期。しかし『バクマン。』と出合い、『従来とは違う形でのキャッチーさやポップさを、本当に追求できていたんだろうか?』と改めて考えるようになって。もっと自分たちの考えるポップの間口を広げれば、そこにたどり着けるのではと試行錯誤して、『新宝島』(15年)が生まれました。

そこから、僕らのストーリーも変わっていったんです。ポップを追求した『新宝島』という入口を作ったからには、入ってきてくれたリスナーに対して、受け皿というか出口をちゃんと作ってあげないといけない。自分たちがハブとなることで、音楽、映像、アート、ファッションなど、様々なクリエイティブを伝えられる存在になろうと。きっとそれは、100万枚、200万枚のCDを売ることよりも、現代的な音楽シーンへの爪痕の残し方になるんじゃないかと思ったんです。

その具体的な取り組みとして15年から、自主企画イベント『NF』をリキッドルームで始めました。イベントでは、僕らがレコメンドするという形で幅広いジャンルの音楽を流したり、イベントを一緒に作る映像ディレクターやスタイリストとも直接交流できる。音楽だけではなく様々なカルチャーに触れられる『サロン』のような場となっています。その頃から、マジョリティーにおけるカウンターカルチャーとして、もっとマイノリティーな活動をしたいと思うようになっていきました」

“東京”と“札幌”がテーマ

「本当はこのタイミングでアルバムを1枚出して、そこまでのストーリーを完結させておくべきでした…(苦笑)。ただ、レコーディングの時間がうまく取れなくて。その後も、『多分、風。』(16年)などアッパーな曲を作って、リスナーの入口を広げていったんです。

今回のアルバムは2枚組になるのですが、1枚目は、作為的に外に向けて発信していこうという要素が強い作品を集めて『東京』というコンセプトに。2枚目は自分たちのために作ろうと考えていた、デビュー前の札幌時代のスタンスに近い作品を集めて「札幌」というコンセプトにしました。

1枚目には、踊れるような要素もあるポップナンバーの『新宝島』『多分、風。』といった楽曲が入っています。ソフトバンクのCMソングにもなっている『忘れられないの』もそう。『モス』という曲では、山本リンダやグループサウンズといった日本の歌謡サウンドに、70年代から80年代に活躍したアメリカのロックバンドであるトーキング・ヘッズのテイストを加えています。

一方、2枚目には、『グッドバイ』『ユリイカ』『さよならはエモーション』『蓮の花』といった、心にしみるタイプの楽曲たちを入れました。『ワンダーランド』はダンスミュージックですが、(90年代初頭にイギリスではやった)シューゲイザーというノイジーで耽美的なダウナーサウンドを混ぜたらどうなるだろう?と挑戦した作品です。

また『茶柱』は、お茶の世界の達人との出会いによって生まれた1曲です。これまでは自分がぶつかった壁や、読んだ本からでしか曲が作れなかったんですが、人との出会いから得たものを、アウトプットすることにも挑めました」

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