女性ロールモデルを増やそう 男女均等、欧州に学ぶ
ダイバーシティ進化論(村上由美子)
6月末に大阪でG20サミットが開かれた。20カ国・地域の首脳級に加え、招待国や国際機関のトップなど38人の世界のリーダーが集合した。そのうち女性は3人のみ。集合写真は政界のジェンダーギャップの現状を如実に表していた。
G20サミット直前に、東京で世界各国から400人超の女性国会議員が集まる会議が開かれた。あるセッションでは政治家のクオータ制(割当制)が議論された。導入する国は近年増えているが、そのような国の参加者の声も賛否両論だ。
経験が浅い女性を人数合わせのために増やすと、議会全体の質の低下につながりかねないとの懸念は残る。一方、自然増加を待てばパリティ(男女均等)達成に100年かかるので、暫定的手段として有効であるとの意見も根強い。
ノルウェーの内閣は半数近くが女性だが、国会議員のクオータ制は導入していない。政党が候補者のクオータを設けており、選挙に勝つためには男女同数の候補者が必須であるという意識が強い。経済協力開発機構(OECD)の報告書によると、多くの国で女性閣僚の登用と国民の政権に対する信頼度には正の相関が示されている。
クオータの是非を超えて、会議参加者の共通認識として挙がったのは、ロールモデルの重要性だった。百聞は一見に如かず。女性リーダーの存在を目のあたりにすることが国民全体の意識を変化させる。リーダーをネットで検索すると上位に挙がるのは男性が多いが、多様なリーダー像を自然に描けるようにロールモデルを社会の様々な分野で増やすことが重要だという声が目立った。
欧州では政界のみならず社会経済の多くの分野でパリティが進んでいる。男女平等参画を担保する法制度も重要だが、無意識の偏見を助長するステレオタイプの芽を摘んでいく運動も活発だ。例えば、おとぎ話に登場する王様は必ずしも男性でなくてもよいであろう。そういえば先日ロンドンで見たミュージカル「ハミルトン」でジョージ・ワシントン大統領を演じたのはアフリカ系の役者だった。リーダーは白人というステレオタイプに挑戦というわけだ。
日本では「政治分野における男女共同参画推進法」施行後初の国会議員選挙が21日に行われる。果たして国会でロールモデルになる女性を増やすことはできるだろうか。
[日本経済新聞朝刊2019年7月15日付]
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