年金制度が変わる 「長く働く」が有利に老後のお金 100年の計(3)

60代後半では3人に1人が厚生年金に加入して働いている
60代後半では3人に1人が厚生年金に加入して働いている

「2000万円不足」で老後のお金が話題になり、公的年金を頼りなく感じた人もいるだろう。年金制度を国は今、どう変えようとしているのか。

経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込まれた改正点は3つある。まず年金のもらい始めを遅らせる繰り下げ受給の柔軟化だ。65歳を基準に70歳までだった年齢の上限を70歳超も可能にする。75歳まで延ばす案が有力とされており、遅くすればするほど年金の受取額が増える。

続いて一定以上の就労収入がある高齢者の年金支給額を減らす在職老齢年金の見直し。「将来的な廃止も展望しつつ制度のあり方を検討する」とした。

最後が短時間労働者への厚生年金の適用拡大だ。2016、17年に続いてさらなる措置を講じる。対象を広げて厚生年金への加入を促し、老後の年金額も増やしてもらう狙いだ。

いずれも近く公表される公的年金の財政検証の後で具体案が固まり、20年の通常国会に法案を提出する見通しとされている。

これら3つの改正案が目指すものを一言で表すなら「長く働いてもらうための仕組みづくり」。希望する人が70歳まで働ける社会を目指すというのが国の方針だ。繰り下げを選ぶとその期間は無年金になるが、働いて収入を得ながら生活すれば、より多くの年金を手にできる。そして「高齢者の就労意欲を阻害する」という在職老齢年金は縮小・廃止に向かう。

短時間労働者の厚生年金加入はパート女性だけではなく、シニアの就労にも効果を発揮している。「フルタイムで働くのは厳しいと考えていたシニアも、厚生年金が適用拡大されたことで加入しながら働くようになった」と第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは指摘する。

加入条件は週の労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上などに引き下げられた。従業員501人以上の企業に適用され、これまでに43万人以上の短時間労働者が被保険者になった。60代の会社員も厚生年金に加入して働く人の割合が増えている。60~64歳では3人に2人、65歳以上も約3割に上る(17年度)。

厚生年金は医療や年金の仕組みが充実している。長く入れば老後の年金も増やせる。仮に60歳の人が月20万円の賃金で5年加入すれば、それまでの年間の年金額に約6万6000円上積みできる計算だ。

今後は500人以下の企業などにも適用が広がる見通しで加入者の増加は続きそうだ。社会保険料の負担から目先の手取り収入は少なくなるかもしれないが、「人生100年時代」には制度を積極的に利用する方がメリットは大きい。

一方の国民年金では繰り下げ年齢の柔軟化以外の具体案は見えてこない。20~60歳という加入期間を延ばすという議論はあるが、「給付の半分を税金で賄っているため、財源の問題もあって難しい」(星野氏)という。

(土井誠司)

[日本経済新聞朝刊2019年7月13日付]

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