2019/7/29

■女子のキャリアを本音で語れる環境

「就活や就職後に男女で企業の対応が異なるのが現実だが、共学のセミナーでは話すことができない。女子大では素直に話せて、実践的な対策を促すことができる」と明かすのは、様々な大学でセミナー講師を務めるハナマルキャリア総合研究所の上田晶美代表だ。

表向きは、女性が働きやすい職場であることをアピールする企業はあふれているが、本当の姿が見えないと悩む学生も多い。日本女子大学学生生活部の増田一美キャリア支援課長は「イメージだけでなく、男女格差や残業時間など現場で働いている女性社員の本音を知ることができる」と強調する。

津田塾大学では、ロールモデルとなる女性を招いての授業や講演が活発だ(東京都小平市)

ロールモデルとなる女性を招いての授業や講演も活発だ。津田塾大学の3年生の女性は「大学で(元厚生労働事務次官)村木厚子さんなど色々な女性の話を聞けたのは刺激になった」と喜ぶ。

女性がリーダーシップを取れる

教育のカリキュラムも独特だ。日本女子大学では1年次から、学生が結婚や出産などライフプランに応じたキャリアを考える授業を実施している。離婚や相続といった実践的な法律知識を身につけられる講座もある。昭和女子大は1年から必修科目があり、4年まで段階的に女性のキャリアを考える機会を設けている。

お茶の水女子大学学生・キャリア支援センターの大風薫准教授は「常にキャリアや女性の生き方について考える環境にある」と話す。同大学は戸籍上は男性でも自分の性別を女性だと認識しているトランスジェンダーの学生の受け入れを発表し、注目を集めている。

共学に比べて、女性がリーダーシップを取る機会が多い。ゼミや部活、サークルなども代表は女性。日本女子大学の卒業生は「会社の会議の場でも、女子大出身者は女性だからと気後れすることなく、積極的に発言する傾向がある」と話す。

■新学部開設や都心回帰が相次ぐ

駿台予備学校によると、2019年度入試では調査した女子大60大学のうち、40大学が志願者が増加した。増加率は9.5%と私立の平均6.3%を上回った。特に日本女子大学や大妻女子大などが大幅に伸びた。

背景には新学部の影響もある。津田塾大学は17年度に総合政策学部を千駄ケ谷キャンパスに開いた。昭和女子大は17年度に国際学部を設置し、20年度には環境デザイン学部を設ける予定だ。

キャンパスの都心回帰も人気を支えそうだ。実践女子大学は14年に東京都日野市から渋谷区のキャンパスに2学部などを移転し、志願者を増やした。津田塾大の総合政策学部は従来の小平キャンパス(東京都小平市)ではなく、渋谷区の千駄ケ谷に設置した。日本女子大は21年に西生田キャンパス(川崎市)の学部を目白キャンパス(東京都文京区)に集約する。学生にとっては、インターンや会社説明会、面接といった移動の手間が省け、就活がしやすくなりそうだ。

(田中裕介)

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