その投信・保険ホントに必要?高齢者勧誘、親族も注意

金融機関はまとまった退職金が預貯金の口座に入ったり、定期預金が満期を迎えたりするタイミングが投信など金融商品を売る販売機会と捉えている。高齢者自身も家族も、こうした節目では金融機関から勧誘を受けやすくなると頭に入れておくといいだろう。

家族で話し合いを

消費生活コンサルタントの松尾保美氏は「銀行で長時間の説明を受けると断りづらくなり、十分に理解しないまま契約しがちになる」と指摘する。「相続対策の無料相談会」にひかれて銀行を訪ねたら、一定の死亡保険金が非課税になると外貨建て保険を勧められたという事例も多い。提案を受けたら、家族間で話し合うべきだと呼びかける。

銀行で販売している保険は、契約を申し込んだ後でも撤回や解除ができるクーリングオフの対象になることがある。ただ、保険料を日本円で納めても払い戻しは外貨という場合も多く、契約時より円高に進んだら為替差損を被ってしまうことがある。「商品に少しでも疑問がある場合は契約しないに越したことはない」(松尾氏)

苦情の増加を受け、生保協は昨年7~9月に複数の金融機関を対象にアンケートを実施した。多くの金融機関が無理な販売に歯止めをかけようと社内規定をつくりながら、現場で徹底していない現状が明らかになった。

保険商品の内容を複数回にわたって説明するルールを設けている金融機関は78%だった一方、実施率は61%にとどまった。69%の金融機関で親族の同席を求めるルールがあるのに、実行に移されている割合も30%と低調だった。

高齢顧客が多いゆうちょ銀行やかんぽ生命保険でも顧客に不利な契約が相次いで発覚している。ゆうちょ銀では高齢者に投信を販売する際、健康状態や金融商品への理解度を確かめるよう定めた社内規定がある。ところが、直営店の約9割で守られていなかったことが6月の発表で分かった。

過大な販売目標を課していることが、不適切な販売が広がった理由の一つとみられる。親会社の日本郵政の長門正貢社長は記者会見でノルマの見直しに言及した。かんぽ生命では職員が故意に保険料を二重徴収した事例まで発覚した。高齢者などが郵便局に抱く安心感を逆手にとったとも受け取られかねない事態だ。投信や保険の商品内容をきちんと理解しないまま、購入した高齢顧客が多かったとみられる。

公的年金だけに頼った生活設計では老後に2000万円不足するとした金融庁の審議会の報告書は大きな議論を呼んだ。「高齢期の資産形成や管理の心構え」や「高齢顧客の保護のあり方」も強調している。金融機関は高齢顧客への丁寧な対応が求められる。高齢者自身もどんな金融サービスが必要なのか、早いうちから考えておく必要がある。

(渡辺淳)

[日本経済新聞朝刊2019年7月13日付]