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50代でモテ期到来 高齢オスのゾウ、交尾にフル回転

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/7/22

■高齢オス、メスを求め速く広範囲を移動

今回の研究では、マスト期のオスが交尾に投入するエネルギーを突き止めるため、ケニア北部の2つの国立保護区に広がる約900頭の個体群を対象に、さまざまな年齢のおとなのオス30頭に追跡用のGPS首輪を装着。研究チームは2000年から2018年にかけてゾウの移動を断続的に記録し、メス探しに費やす労力を表すものとして、毎日の平均スピードを明らかにした。

調査の間、最も高齢のオスたちは、マスト期以外は歩く速度が最も遅かった。だが、マスト期が始まるとこの年配者たちはフル回転になり、若いライバルたちよりも早く歩いていた。50代でありながら、この期間には歩き回る範囲も3.5倍に広がっていた。

「基本的に、彼らは全てのエネルギーを蓄えておいて、マスト期に入るとそれを消費するということです」とテイラー氏。

年を取ったオスが、なぜこれほど交尾に熱心になるのだろうか。まず、これらのゾウは70歳代まで生きることから、メスは交尾の相手を探す際、健康状態を示す尺度として年齢を使うのだとモス氏は言う。

テイラー氏はもう1つの要因として、「年を重ねるとともに、オスの体はずっと成長を続けます。ゆえに優位な存在となり、メスはその点を好むのです」と話している。

しかし、一番大きなオスでさえも、ライバルに勝つためにもう一つ後押しが必要なのだ。

「メスをライバルのオスと取り合うとき、マストが優位に働くのです」とモス氏は言う。

■大型ゾウも抗えない密猟の影響

「マストに入ることで、オスは交尾対象となるメスに対して、それだけ長く生きてきたのだということを宣伝しているのです」とモス氏。ケガや干ばつや病気を考えたら偉業ではあるが、ゾウたちが対抗できないことが1つある。合法であれ違法であれ、狩猟の標的になることだ。

例えば、今回の研究のためにテイラー氏らのチームが追跡していた高齢のオスのうち、何頭かは2011年に続発した象牙目当ての密猟で殺されてしまった。

「優位にあった大きなオスがいなくなったことで、ゾウの繁殖がどう変わるかは興味深い点となるでしょう。繁殖戦略に変化はあるのでしょうか?」。研究者たちにもわかっていないが、それを解明しなければならないような事態を避けるのは市民と政府の力だ、とテイラー氏は指摘した。

5月に発表された研究結果によると、密猟によるゾウの死亡率は、国際市場で象牙の需要が小さくなったことなどを受けて減少している。香港は2021年までに象牙市場を閉鎖することを決めており、こうした規制措置も、密猟の減少を早める助けになるかもしれない。

(文 Grant Currin、訳 高野夏美、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年7月5日付]

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