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人形町今半の肉哲学 和牛の味は舌じゃなくて目で選ぶ 人形町今半 高岡慎一郎社長(上)

2019/9/7

人形町今半社長 高岡慎一郎氏

すき焼きを主体とした、和牛を取り扱う老舗料理店として知られる人形町今半。昨今、“肉好き”の消費者が増え、肉の銘柄、肉の格付け、肉の部位名などについて話題になることも多いが、人形町今半は意外にも、そのいずれにもこだわらない独特の考え方を持っていた。高岡慎一郎社長に、和牛肉の仕入れの考え方と味で評価される秘密を尋ね、弁当や精肉販売まで多角化していった創業の経緯を語っていただいた。

――おいしい和牛というと「近江」「松阪」などの銘柄牛を思い浮かべますが、人形町今半ではどれを扱っていますか。

うちの場合は特定の生産地で選ぶということをしないんです。大切なのは食べておいしいことであって、「○○牛」といった銘柄や「A5」か「A4」か(歩留まりと肉質によるランク)といったことで選ぶということをしていない。

つまり、名前や格付けで選ぶのではなく、味で選ぶ。と言っても、舌で選ぶのではなく目で選ぶんです。食べてみることはできないので、肉を目で見て選ぶ。肉の状態を見ただけで味を感じ取らないといけないので非常に難しいのですが、これができる熟練の仕入れ担当者がいることがうちの強みです。

ところが、不思議とうちが買う生産者は、結果として同じ生産者に絞られてくるということがあります。選んでみたところ、次もなぜかまた同じ生産者のものを仕入れたということになるのです。いいものを出す人は、またいいものを出す。私たちとしては、そのような生産者の方たちとのつながり、コミュニケーションをとっていくことが大事だなと思っています。

たとえば最近ですと、鳥取県の田村牧場さんというところがあるんですけれど、そこからの仕入れは多いです。味もよいですし、牧場の考え方、思いにも共感します。

――そういった生産者と契約して、人形町今半専用の和牛を育ててもらうといったこともありますか。

実は以前、「牛づくり」もやってみたいと考えて契約牧場というのをやったことがあります。うちでよい子牛を買って、山形と近江2カ所の生産者に2年4カ月預けて育ててもらって、その間の餌代、手間代をお支払いして、そしてその肉を買い取るという形にしました。

当初、生産者のほうでも面白いねという形で始まったんですけれど、1回目の出荷後、2カ所とも次はやらないと断られちゃいました。なぜかというと、まずは今半さんの肉を育てているというだけで緊張すると。預かった牛を病気にしたら、死なせたらどうしようというプレッシャーがある。

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