2019/7/27

いきいき職場のつくり方

私たちの脳は無数の神経細胞(ニューロン)が接合してネットワークを形成しています。その接合部(シナプス)で情報をやり取りする役目を担っているのが、神経の末端から分泌される神経伝達物質です。この神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン) が接合先の神経細胞を興奮させたり抑制させたりして、情報が次々と伝達されていく仕組みとなっています。ただ、何らかの原因で神経伝達物質の量が不足するなどすると、情報伝達が十分にできなくなり、不注意、多動性などの症状が表れると考えられています。

早めに専門医の診断を

みなさんの職場で、いつもミスを繰り返したり、衝動的な振る舞いが絶えなかったりして、仕事のトラブルが続いている同僚がいたとしたら、その人はもしかしたらADHDかもしれません。業務の進捗に影響が出るかもしれませんし、たびたびミスを注意されることで、本人が自信を失いメンタル不調に陥るかもしれません。早めに、職場の責任者が産業医に相談するなり、本人に専門医による治療を促すなりすることが大切です。

ADHDと診断されたとしたなら、多動性、衝動性、不注意といった振る舞いが、本人の性格なのではなく、発達の問題による行動特性だと、周囲が理解する必要があります。本人は怠けているのではありません。脳(前頭葉)の機能不全で自らを十分にコントロールできずにいるのです。

どうしても仕事がうまくいかない場合は、その特性に応じて本人の能力を生かしながら働ける環境を整えることが望ましいでしょう。ADHDの人の多くは、集中力が求められる仕事や計画性が必要な仕事、根気が必要な単純作業は得意ではない半面、行動力や発想力に優れている傾向があります。本人と相談しながら、何ができるのか、何が得意なのか、何ができないのかを仕分けして、特性にあった仕事を決めていくのがよいでしょう。

具体的な仕事についても、1日に処理する仕事量を明確に決めてしまった方がよいでしょう。作業の内容についても、ひとつひとつ順位付けすることが望ましいでしょう。手順を細かく項目別に分けて、チェックリスト化するのもよい方法でしょう。

発達障害はまさに「発達の障害」です。すべてが滞りなく完治するのは難しいとしても、改善はできます。今日では、神経伝達物質の分泌をコントロールすることで症状を抑える治療薬も登場しています。

自分自身、忘れ物や、うっかりしたミスが多かったり、整理整頓が苦手だったり、あるいは職場の仲間からそうしたことを指摘されたときは、産業医や専門医に相談してみてはいかがでしょう。

また周囲は、その症状が本人の能力の問題ではなく、あくまでも特性であるということを理解する必要があります。そのうえで、職場の責任者には、本人とともにその特性にあった仕事を探り、割り当てることが求められます。こうした取り組みこそが、障害の有無によって分け隔てられることのない社会をつくる第一歩となるのではないでしょうか。

※紹介したケースは個人が特定できないよう、一部を変更しています。

植田尚樹
1989年日本大学医学部卒、同精神科入局。96年同大大学院にて博士号取得(精神医学)。2001年茗荷谷駅前医院開業。06年駿河台日大病院・日大医学部精神科兼任講師。11年お茶の水女子大学非常勤講師。12年植田産業医労働衛生コンサルタント事務所開設。15年みんなの健康管理室合同会社代表社員。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

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