最強折り畳み傘3選 丈夫でおしゃれ、カバンに常備
納富廉邦のステーショナリー進化形
いつ降り出すか分からない夏の雨に備えて、カバンに入れてあると便利なのが折り畳み傘。最近の折り畳み傘は、メインの傘として使えるようにしっかり作られているものも多い。
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少し前まで折り畳み傘は、あくまでも長傘のサブ的な扱いだった。だから、軽く、小さく、安価なものが売れていた。
しかし今や、梅雨だけでなく1年中、いつ雨が降るか分からない状況。そうなると長傘ではなく、カバンの中に入れておける折り畳み傘がメインの傘になる。
折り畳み傘はその構造上、長傘に比べるとどうしても壊れやすいし、サイズも小さく、頼りない感じがある。軽く、小さいものが主流だったのだからなおさらだ。また、メインに使えるような折り畳み傘は、高価なものが多く、傘に数千円出す習慣があまりなかった日本では、良い傘であってもあまり売れていなかった。
それでも、メインとして使える折り畳み傘は、普通に販売されている。7、8千円の傘とはいえ5年使えば簡単に元が取れる。カバンに入れられる折り畳み傘は、長傘に比べて忘れにくく、盗られにくいというメリットもある。
そんなことをずっと考えながら、良い折り畳み傘を求め続けてきた私が、現状のベストだと思う3本を紹介する。
クニルプス/ボタン一つで自動開閉
世界で最初に折り畳み傘を商品化したドイツのメーカー、クニルプスは、ヨーロッパでは折り畳み傘の代名詞になっているブランド。ビス一つに至るまで、自社で開発している(製造は中国の工場で行われている)。その開閉のスムーズさや、壊れにくさなどが、そのしっかりした設計と吟味されたパーツによるものだということは、使ってみれば実感できるだろう。ボタン一つで自動開閉するのだが、その動作の優しくスムーズな動きは、ボタン式の傘のイメージを変えてしまうほどだ。
クニルプスのラインアップの中でも、個人的に最も愛用しているのが「T.220」というモデル。その中でも「nuno」と題された、ファブリックブランド「NUNO」とのコラボレーションモデルは、単調なデザインが多い紳士用傘の味気なさに一石を投じた製品だといえる。大人の男性でも若い女性でもシックにファッショナブルに持てる柄がそろっているのだ。
T.220は畳んだときは長さ約29cm、直径約6cmと一般的なブリーフケースに楽に入る大きさながら、広げると直径97cmと、大人の男性がぬれずに差せるサイズに広がる。骨は8本あるのに重さは約345gと、持ち歩いて負担にならない範囲に収まっている。
実際にクニルプスの傘をもう10年近く使っているのだが、壊れて買い替えたことは一度もない。かなり強い風が吹く地域に住んでいるのだけど、強風時にもグラスファイバーの親骨とアルミの支柱のコンビネーションで、傘がオチョコになることもなく、骨が折れることもなく、しっかりと雨から身体を守ってくれる。
T.220には日本法人発のアイデアによるセーフティーシステムが搭載されている。傘をワンボタンで閉じた後、シャフトを手で引っ込める必要があるのだが、このとき、一気に押し込む必要がないのだ。押した分だけ引っ込んでいくので、うっかり手を滑らせて、シャフトが飛び出すということもない。ぜひその動きを次の動画で確認してほしい。
強い力も不要なので、女性やお年寄りでも安心して使える。筆者は、この機能のために、特に不満のなかった前モデル「T.200」からT.220に買い替えたのだ。
ブラント/周囲にも優しい
ニュージーランドの傘メーカー、ブラントは、傘の安全性に注目したメーカーとして、世界の最先端を行っているブランドだ。実物を見れば分かるが、傘の骨の先端が外に出ていない。全ての傘がこの形なら、雨の人混みもずいぶん歩きやすくなるに違いない。
しかも、この形状は傘の内側に入り込んだ風を効率良く逃がすシステムの一部になっている。傘の中に入り込んだ風を、骨の先に用意されたポケットで受けて、左右に逃がすことで、傘が強風でオチョコになることを防いでいるのだ。このシステムのために、骨と布の間に遊びが作られている。風が入ってくると傘の布地が少し浮くのだけど、この遊びで、風の力が骨に集中せず、骨を伝わってポケットへと逃げていくわけだ。だからブラントの傘を差して風の中を歩くと、風の向きや強さに応じて、傘が微妙に揺れる。その感じは、やじろべえを手に持っているような感触で面白い。
ブラントはもともと長傘がメインなのだが、「XS_Metro」は折り畳みモデル。人ごみを歩くかもしれないときは、クニルプスではなくこのブラントを持っていくことが多い。とがったところがないから、差していてとても安心なのだ。それでいて風にも強いのだから文句はない。
カラーバリエーションがそろっていて、たくさんの色から選べるのもうれしい。製造は中国の工場だが工作精度は高く、開閉もとてもスムーズだ。T.220のように自動開閉ではないけれど、開くときはボタン一つで、閉じるときもボタンなどを押す必要がなく、ハンドルをただ下げるだけなのが、とても気持ちいいのだ。特に閉じるとき、すーっとシャフトも一緒に縮むので、折り畳み傘にありがちの、最後にシャフトを押し込む作業が不要なのがうれしい。
ただ、その機能のおかげで、畳んだ状態で約37cmと、折り畳み傘としては少し長く、持ち歩くときにカバンを選ぶ。また開いたときの直径は95cmと十分なのだが、エッジが丸くなっている分、身体を保護する面積がやや小さめ。問題があるほどではないが、「もう一回り大きいと良いのに」と思うこともある。
それでも、この機能とデザインは他に替えられないし、実用上困ることはないので、クニルプスと並んで愛用している。
ホワイトローズ/ビニールの折り畳み
最後に紹介するのは、国産の折り畳み傘。皇室御用達傘を多く作るホワイトローズは、折り畳み式のビニール傘を発売している。同社は享保6年(1721年)創業。昭和27年には世界で初めてのビニール傘を開発したという。折り畳み式のビニール傘というのも、ホワイトローズだから作ることができた製品だ。何がすごいって、ビニール傘なのに重さは約275gと軽量なのがすごい。8本の親骨はグラスファイバー製でできている。
生地の素材はオレファイン系の多層フィルムを使用。ビニールなので布製の傘に比べてはっ水性能が落ちにくく、長く安定して使うことができる。強い雨の際の視界が広く得られるのもビニール傘ならではの長所だろう。布製の傘に比べると開け閉めにややコツがいるが、慣れれば通常の折り畳み傘と変わらない程度の手間でしかない。
畳んだときの長さは約37cmとブラント同様長めだが、完全防水のケースが付いているので、カバンに差し込むことも可能だ。開くと直径は約96cm。折り畳み傘としては十分なサイズを持つ。
この傘のすごいところは、風対策に用意された「逆支弁機構」。なんと、傘に穴が空けられているのだ。骨に隠れるようにスリットが空いているのだが、これがうまくできたシステム。雨は外を流れるので穴に入らず、傘の内側に入り込んだ風だけが、その穴から抜けていく。つまり強風時にもオチョコにならない。このシステムは同社のビニール長傘にも使われているけれど、ほんと、うまいアイデアだと思う。
グリップは桜の天然木で、製造も日本製。差してみるとわかるが、本当に精緻に作られていて、日本の職人仕事を感じさせる。もちろん張り替えや修理にも対応する。価格は高いが、それに十分見合う機能と価値がある折り畳み傘だ。
佐賀県出身、フリーライター。IT、伝統芸能、文房具、筆記具、革小物などの装身具、かばんや家電、飲食など、娯楽とモノを中心に執筆。「大人カバンの中身講座」「やかんの本」など著書多数。
(写真 スタジオキャスパー)
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