カラーバリエーションがそろっていて、たくさんの色から選べるのもうれしい。製造は中国の工場だが工作精度は高く、開閉もとてもスムーズだ。T.220のように自動開閉ではないけれど、開くときはボタン一つで、閉じるときもボタンなどを押す必要がなく、ハンドルをただ下げるだけなのが、とても気持ちいいのだ。特に閉じるとき、すーっとシャフトも一緒に縮むので、折り畳み傘にありがちの、最後にシャフトを押し込む作業が不要なのがうれしい。

ただ、その機能のおかげで、畳んだ状態で約37cmと、折り畳み傘としては少し長く、持ち歩くときにカバンを選ぶ。また開いたときの直径は95cmと十分なのだが、エッジが丸くなっている分、身体を保護する面積がやや小さめ。問題があるほどではないが、「もう一回り大きいと良いのに」と思うこともある。
それでも、この機能とデザインは他に替えられないし、実用上困ることはないので、クニルプスと並んで愛用している。
ホワイトローズ/ビニールの折り畳み

最後に紹介するのは、国産の折り畳み傘。皇室御用達傘を多く作るホワイトローズは、折り畳み式のビニール傘を発売している。同社は享保6年(1721年)創業。昭和27年には世界で初めてのビニール傘を開発したという。折り畳み式のビニール傘というのも、ホワイトローズだから作ることができた製品だ。何がすごいって、ビニール傘なのに重さは約275gと軽量なのがすごい。8本の親骨はグラスファイバー製でできている。
生地の素材はオレファイン系の多層フィルムを使用。ビニールなので布製の傘に比べてはっ水性能が落ちにくく、長く安定して使うことができる。強い雨の際の視界が広く得られるのもビニール傘ならではの長所だろう。布製の傘に比べると開け閉めにややコツがいるが、慣れれば通常の折り畳み傘と変わらない程度の手間でしかない。

畳んだときの長さは約37cmとブラント同様長めだが、完全防水のケースが付いているので、カバンに差し込むことも可能だ。開くと直径は約96cm。折り畳み傘としては十分なサイズを持つ。

この傘のすごいところは、風対策に用意された「逆支弁機構」。なんと、傘に穴が空けられているのだ。骨に隠れるようにスリットが空いているのだが、これがうまくできたシステム。雨は外を流れるので穴に入らず、傘の内側に入り込んだ風だけが、その穴から抜けていく。つまり強風時にもオチョコにならない。このシステムは同社のビニール長傘にも使われているけれど、ほんと、うまいアイデアだと思う。
グリップは桜の天然木で、製造も日本製。差してみるとわかるが、本当に精緻に作られていて、日本の職人仕事を感じさせる。もちろん張り替えや修理にも対応する。価格は高いが、それに十分見合う機能と価値がある折り畳み傘だ。

佐賀県出身、フリーライター。IT、伝統芸能、文房具、筆記具、革小物などの装身具、かばんや家電、飲食など、娯楽とモノを中心に執筆。「大人カバンの中身講座」「やかんの本」など著書多数。
(写真 スタジオキャスパー)