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存在感増すトランスジェンダー インドの巨大宗教行事

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/7/17

ナショナルジオグラフィック日本版

2019年のクンブ・メーラで、行列を率いるトランスジェンダーの活動家、ラクシュミー・ナラヤン・トリパティーさん。クンブ・メーラはインド最大の宗教祭典であり、世界で最も多くの人が集まる行事だ(Photograph by Ismail Ferdous)

「43年の人生で、これほどの愛情と尊敬を集めたことはありません」と、パビトラ・ニムブホラカルさんは話した。2019年初めにインド・プラヤーガラージ(アラハバード)で開かれた世界最大級の宗教行事、クンブ・メーラの49日間でのことだ。

ニムブホラカルさんは、トランスジェンダーの活動家ラクシュミー・ナラヤン・トリパティーさんが2015年に結成したヒンドゥー教の修行会「キンナル・アカラ」(キンナルはトランスジェンダー、アカラは修行会の意味)で、リーダーの1人に名を連ねている。今回のクンブ・メーラでは事務を担当し、およそ2500人の会員(多くがトランスジェンダーの女性)が安心して参加できるよう仕事をこなした。

クンブ・メーラは、3年に1度開かれ、インドの4つの都市(ハリドワール、ナーシク、ウッジャイン、プラヤーガラージ)を順番にめぐる。2億5000万人ともいわれるヒンドゥー教徒の参加者たちは、クンブ・メーラの期間にガンジス川に身を浸せば、罪や悪い影響を洗い清められると信じている。

ヒンドゥー教の修行会「キンナル・アカラ」のリーダーの1人、パビトラ・ニムブホラカルさん。クンブ・メーラの間、2500人の会員の世話をした(Photograph by Ismail Ferdous)

ニムブホラカルさんは、クンブ・メーラで、ヒンドゥー教の中でキンナルが占める位置について演説するのに何時間も費やした。アカラの集会テントを訪れた多くの人が熱心に耳を傾ける中、彼女は語った。

「私たちはヒンドゥーの宗教書で半神半人とされ、祝福する力をラーマ神から授けられています」

祭りの間、毎日2万~3万人の群衆がキンナル・アカラのもとに殺到した。YouTubeやテレビ、新聞でニムブホラカルさんを見たインド各地の人々が彼女に会いたがり、彼女をマタジ(母)やマハラジ(導師)と呼んだ。家族の悩みを話し、解決策を見出してくれることを期待する人もいれば、あるいはただ手を取ったり、抱き締めたりしたがる人たちもいた。彼女を聖人だと考え、その力を感じようとしたのだ。

このような待遇は、ニムブホラカルさんのこれまでの人生とは全く対照的な経験だった。女性的であることへのからかい、性的指向を理由とする兄弟からの殴打、公衆の面前での虐待まで、今いる場所にたどり着くまでには長い道のりがあった。「この日を迎えられたということは、きっと、前世で何か善行を積んだに違いありません」と、彼女は言葉を詰まらせた。

信者を抱きしめるラクシュミー・ナラヤン・トリパティーさん(Photograph by Ismail Ferdous)

アカラは歴史的に男性の力が強く、女性が指導するアカラはない。一部の会にごく少数の女性修行者がいるだけだ。だが今回「ジュナ・アカラ」が、トランスジェンダーの修行会を受け入れた。クンブ・メーラの度にキャンプを設けて祈り、来訪者に教えを説いたり祝福を与えたりする13の宗派の中で最も古く、最大規模の修行会だ。このジュナ・アカラの一員となったことで、トランスジェンダーの会員たちは、吉日に「王の聖なる沐浴(もくよく)」(シャヒ・スナン)を行う権利を与えられた。プラヤーガラージの川の合流地点で、何百万人もの他の参加者に先んじて水に入ることを認められたのだ。

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