リーダーの仕事は2つだけ 「決める」と「導く」キユーピー 長南収社長(上)

――どのようにして理念を全社で共有しているのですか。

「新入社員向けの研修のほか、課長や係長クラスが参加する研修を、全国に84カ所ある工場の協力会社を含めて実施しています。研修では知識の前に意識を根づかせます。製品のつくり方だけでなく、それを支える心の部分まで教え込むのです。研修には海外の従業員も参加します。国・地域や文化が違えば、考え方も違う。多様性を認めたうえで、理念をどう落とし込んでいくかが重要です」

新人で配属された工場で「ものづくりの心をたたき込まれた」と語る

――ご自身はどのような機会に理念を学んだのですか。

「私は入社から6年間、仙川工場(東京都調布市)で勤務しました。卵黄などの原料をミキサーで調合してマヨネーズをつくる工程を担当していたときのことです。疲れて、ついつい原料が入った段ボール箱の上に、腰かけていました。すると、中堅の先輩に目の玉が飛び出るくらい怒られたのです」

「先輩はこう説明してくれました。商品は売ることがゴールではない。買った後に価値を感じて、また買おうという気持ちになってもらえるかどうか。そう考えたとき、たとえ原料の箱であっても、その上に腰掛けるような振る舞いはお客様の信頼を裏切ることではないか、というのです」

顧客を決して裏切らない

「こうして工場で、ものづくりの心をたたき込まれました。当社は出来上がった商品の分析結果だけでOKを出しません。工場の床や長靴の底、配管までピカピカに磨き上げることも求められます。どこか1カ所が汚れたままだと、それが当たり前になって汚れが拡大していき、商品を損なう恐れも生じます。見えないところから徹底的に品質を担保してはじめて、商品もOKとなるのです」

「当社は創業当初、缶詰の製造販売を手がけていました。缶詰は中身が見えませんよね。見えないものを買っていただくには、決して裏切らないことが大切です。それが創始者の理念であり、当社の出発点なのです」

――創始者の精神が色濃く受け継がれているのですね。

「次の世代のリーダーについても、我々の一番の原動力である『楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)』という考え方を継承できるかどうかが前提となります。その上で、公明正大で明るい、人の話を素直に聞けるか、反省できるか、が次に求められる資質でしょう。また、変化の激しい時代ですので、一定の経験が必要不可欠です。調味料やサラダ、タマゴといった主要事業での、生産や営業、海外などの経験です。素質がある人と見込んだ人材については、社外取締役にも見てもらいながら育成をはかっています」

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長南収
1980年(昭55年)鹿児島大水産卒、キユーピー入社。2001年仙台支店長、08年大阪支店長、12年東京支店長、14年取締役、16年取締役常務執行役員、17年2月から社長。山形県出身。

(薬袋大輝)

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