リーダーの仕事は2つだけ 「決める」と「導く」キユーピー 長南収社長(上)

――事業売却では社内の反発もあったのではありませんか。

「おそらく恨みも買っていると思います。売却した会社には何代にも渡って当社のトップや従業員が関わってきたのですから。でも私は『利益が出ないから』というだけで判断したのではありません。これからの時代、家庭で料理をする機会は減っていきますから、当社も調味料の事業だけには頼れません」

営業本部時代(1987年、31歳)

「これからは、タマゴやサラダといった健康食品を使った料理の提案で、日本の健康寿命を延ばしていきたいという大きな目標が我々にはあります。会社として向かう方向が明確なら、そのためにはつらい判断を下せるのがリーダーの条件です。恨まれても、結果として従業員や顧客のために何が必要なのかを考えて大なたを振るいました」

「ただ、納得感がないと人は動きません。このため、年に2回、約400人が集まるグループ会社の幹部会で、5年以内に利益を出せない事業からは撤退するなど、聖域なくメスを入れる方針を説明してきました。そこで出された意見は真摯に受け止めています。社員から無記名アンケートで寄せられた意見にも、一つ一つ社内のコミュニティーサイトで回答しています。価値観や働くということについて、従業員と向き合うことを忘れてはならないというのが創始者、中島董一郎の教えです」

社是は「楽業偕悦」

――それを実践するには何が必要ですか。

「社是でもある『楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)』という理念を社内では徹底しています。志を同じくする人が、仕事を楽しみ、困難や苦しみを分かち合いながら悦びを共にする、という意味です。私なりに理解しているのは家族経営だということです。新入社員にいつも言っているのですが、新人でも正しいことは正しい、上司でも間違っているのは間違っています。これを言えるのが楽業偕悦です。私が間違っていたら『殿、ご乱心』といえるような会社なのです」

「当社には社長室がありません。ほかの社員と同様、我々役員も座席を自由に選べるフリーアドレス制です。ただ完全に一般の社員と一緒になると混乱するので、同じフロアのなかで役員のブロックを設けて、全体を見わたせるようにしています。また、社内では皆、役職では呼ばず、『さん』付けです。新入社員も私のことを『長南さん』と呼びます。私が入社した当時は、名刺に役職も書いてありませんでした」

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧