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裕次郎と二人三脚31年 私服も衣装も仕立て2000着 伝説の専属テーラー 遠藤千寿氏が語る

2019/7/12

■1つボタンの上着、スカーフの裏地…みんな裕次郎

兄・石原慎太郎さん(左)と並ぶ裕次郎さん。「この時代のはやりだった狭く長いVゾーンも作りました。でも1つボタンでしょ」。裕次郎さんの影響で若者に1つボタンが流行した=共同

――服作りには裕次郎さんの意見をどう反映していたのですか。

「背広はすべてショートレングスというヨーロッパの希少な直輸入生地ばかり。どれも日本では唯一のもので、1着40万~50万円でした。紺をベースにヘリンボーンやストライプの地模様がお好きでした。生地が到着するとばーっと適当に仮縫いしながら、2人で襟を大きくしよう、ポケットを斜めにしようなどと話し合いながら作っていく。裕次郎さんはアイデアを次々出す。1つボタンの上着をはやらせたのも、上着の襟を大きくする人が増えたのも裕次郎さんの影響です」

「裕次郎さんは形をデザインするのが大好きなんですよ。背広の上着では襟の形が独特ですし、ポケットにフラップをつけることも多かった。また、シャツの襟高も有名です。普通の人は高くても4~4.5センチなのが、裕次郎さんは5.5センチ。首が長いからというわけではなく、背広から襟が多めに出ると首回りがすっきりする。これも裕次郎さんのアイデアでした」

「裕次郎さんだからこそ、このデザインもいけるな、というのがある。シャツの襟が高いのもそう。着るとね、すっきり、きれいで似合うんだ」=共同

――凝り性で人とは違うものを作られたんですね。

「とにかくおしゃれなんです。『下着以外』すべて作りました。スカーフの裏地をはやらせたことでも有名です。あるとき、上着の裏地に柄物を使ってみたい、と言われました。当時そういう裏地は探しても見つからず、エルメスに向かいました。エルメスのスカーフを同じ柄で3~4枚集めて裏地にしました。裏地だけで15万円以上かかりましたね。それから裏地を扱う取引先に、柄物の裏地を作ってもらうようになりました。マスコミに派手な裏地が出ると話題になり、ばーっと広がりました。20代初めのころです」

――私服だけでなく映画やテレビの衣装もすべて手掛けられた。

「私服ではショートパンツ、スキーズボン、ヨットに乗るときのブルゾンなど。背広は少ないときで注文1回あたり7~8着、多いときは13~15着作りました。裏側にミンクを使ったチェックの生地のコートもよくお似合いだったなあ。また、映画やドラマ『西部警察』『太陽にほえろ』の衣装や宝酒造『松竹梅』のCMのタキシードなど、裕次郎さんのものはすべて僕が作りました。ただ作った数が5000着というのはやや大げさ。私服と衣装すべてで2000超ほどでしょう」

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