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わずか34年で最高級ワイン フランチャコルタの奇跡

エンジョイ・ワイン(14)

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NIKKEI STYLE

イタリアの最高級スパークリングワイン「フランチャコルタ」の歴史は意外に浅い。デビューは1961年で、ライバルとも称されるフランスのシャンパンに遅れること約300年。短期間で世界的な名声を確立できたのは、前回(「自然派スパークリング 伊フランチャコルタの実力」 )述べた恵まれた気候に加え、ワイン造りの長い歴史と現地の人々の旺盛なベンチャー精神のたまものだ。

フランチャコルタ地域のほぼ中心に、ひときわ歴史を感じさせる石造りの建物が鎮座している。「グイド・ベルルッキ」だ。同地域には約120のワイナリーがあるが、ベルルッキはその中でも特別な存在だ。1961年に、現在フランチャコルタと呼ばれる高級スパークリングワインを世に送り出したのが、まさにこのワイナリーだからだ。それを誇示するかのように、同社の商品ラインアップには「ベルルッキ'61」と名付けたシリーズがある。

グイド・ベルルッキはもともと同ワイナリーを設立した貴族の名前だ。ベルルッキ家は代々、フランチャコルタの地でワイン造りに携わってきた。スパークリングワインが生まれたのは戦後だが、同地でのワイン造りの歴史は古い。記録をたどると、16世紀にはすでに地元の消費量を上回るワインが生産されていた。1809年に作成されたナポレオンの土地台帳によると、域内のブドウの栽培面積は千ヘクタールを超えていたという。

1950年代中ごろ、もっと高品質のワインを造りたいと考えていたグイド・ベルルッキは、地元出身の醸造家フランコ・ジリアーニに声を掛けた。ところが、当時まだ20代で野心あふれるジリアーニは、ふつうのワインではなく、イタリア人にも大人気だったシャンパンと同じスパークリングワインを造りたいと直訴。こうしてジリアーニは、ベルルッキから経済的な支援を受け、数年がかりでシャンパンと同じ瓶内二次発酵方式の高級スパークリングワインを完成させた。

時にイタリアは高度経済成長の真っただ中。発売間もないフランチャコルタは、大消費地のミラノまで車で約1時間という地の利もあり、即座に人気に火が付いた。67年には高級ワインの証であるDOC(統制原産地呼称)の認定を政府から受け、95年にはイタリアワインの最高ランクであるDOCG(統制保証原産地呼称)に格上げ。名称も正式にフランチャコルタに統一された。この間、ベルルッキの成功に刺激されたミラノの実業家や投資家らが次々とフランチャコルタの製造に参入し、市場は一気に拡大した。

こうした大躍進は「フランチャコルタの奇跡」とも呼ばれる。その立役者である2人は、今の時代に例えるなら、ジリアーニは才能とやる気にあふれる若手起業家、ベルルッキはそれを応援するベンチャー・キャピタリストと言ったところだろうか。その後、ベルルッキの経営はジリアーニ一族が引き継ぎ、今に至っている。

今回、ベルルッキで、さまざまなタイプのフランチャコルタをイタリア料理の一皿一皿に合わせて味わう機会を得た。瓶内二次発酵方式で造るフランチャコルタは瓶の中で二次発酵が終了した後も、発酵に使った酵母や酵母のエサとして加えた糖類、発酵の副産物などをすぐには取り除かず、しばらく瓶の中でワインと一緒に熟成させるため、ふつうのスパークリングワインに比べて複雑でコクのある味わいになる。だから、フレッシュさが求められる食前酒としてだけでなく、複雑な味わいの料理とのハーモニーが求められる食中酒としても楽しめるというわけだ。

例えば、フレッシュサラミのラグーソースを絡めたフリッジのパスタに合わせたのは、「ベルルッキ'61 フランチャコルタ ナチューレ 2012」。同じ年に収穫したブドウだけから造る「ミレッジマート」タイプで、発酵後に5年以上の瓶熟成を経ているため、コクのある味わいだ。また、ドサージュ(仕上げに糖分を含んだリキュールを加えること)をしていないため、辛口で、余韻の長い酸味とミネラル感も印象的だ。

メーン料理の、牧草で育てた牛フィレ肉には、ピノ・ネーロ(ピノ・ノワールのイタリアでの呼び名)から造った「ベルルッキ'61 フランチャコルタ ナチューレ ロゼ 2012」を合わせた。ロゼ特有のほのかな渋みと熟成から来るうまみ、そしてフランチャコルタならではの軽快な果実感が、脂身の少ない赤身の牛肉にぴったりだ。

フランチャコルタ地域には、ベルルッキやジリアーニのベンチャー精神を受け継いでいるかのような、新進気鋭のワイナリーもある。その一つが、2010 年に設立された「コルテ フジア」だ。

大学で農業を学んだジジ・ネンブリーニさんが28歳の時、大学で醸造学を修めた幼なじみのダニエレ・ジェンティーレさんと共同で立ち上げた。ブドウ畑はフランチャコルタ地域の南西の境界線上に位置する、標高380メートルのオルファノ山の急斜面にある。畑からはイタリア農業の中心地である肥沃なポー平原が一望できる。

フランチャコルタ地域は有名なワイン産地の中では面積が小さいほうで、新たに土地を開墾してブドウを植えるのは容易ではない。ネンブリーニさんは「(ワイナリー設立のための)お金探しも大変だったけど、畑探しも大変だった」と笑う。急斜面のブドウ畑は、15年ぐらい放置されていた耕作放棄地を所有者から借りたものだという。

生産量は現在、年間3万本。量では同400万本のベルルッキの100分の1にも満たないが、質の高さは老舗ワイナリーにもけっして引けを取らない。例えば、スタンダード・タイプの「ブリュット」は、果実味も酸味もしっかりとした爽快な口当たりのワインだ。ドサージュはしていないというが、酸が非常にやわらか。「畑が南向きの斜面にあるため日当たりがよく、ブドウがよく熟すから」とネンブリーニさんは説明する。

ちなみに、コルテ フジアの4種類のワインをすべて並べると、ボトルのラベルのデザインがオルファノ山のシルエットを描く。それくらい、オルファノ山の斜面に広がる畑は同ワイナリーの象徴なのだ。

発売後すぐ海外のバイヤーの目に留まり、早くも15年から輸出を始めた。日本にも量は少ないが輸入されている。「いずれ、ピノ・ネーロから赤のスティルワインも造ってみたい」と語るネンブリーニさん。長いワイン造りの歴史と、綿々と受け継がれる旺盛なベンチャー精神の融合がフランチャコルタに新たな進化をもたらすに違いない。

(ライター 猪瀬聖)

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