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原宿ポップカルチャーの伝道師 レール外れた20年

アートディレクター 増田セバスチャン氏

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NIKKEI STYLE

歌手きゃりーぱみゅぱみゅのデビュー時の美術を手掛け、一躍有名になったアートディレクターの増田セバスチャン氏。原宿のKAWAII文化の伝道師として華やかなイメージがあるが、若い頃は「レールから外れた」人生を送ってきたという。その間にどんな葛藤があったのか――。U22記者と早稲田大学理工学術院の大森正也さん、法政大学キャリアデザイン学部の坂田菜摘さんがインタビューした。

 1970年、千葉県松戸市の呉服店の長男として生まれる。幼児期に難聴の病気を患ったり、思春期に家庭崩壊を経験したり、壮絶な少年時代を送った。高校卒業後は演出家でもあり、作家でもある寺山修司氏の影響を受け、舞台美術の道へ。25歳で原宿に「6%DOKIDOKI」というファッション雑貨の店舗を開業し、原宿カルチャーの先駆者となる。
 2011年、常連客だったきゃりーぱみゅぱみゅのリクエストで増田氏がデビュー曲のミュージックビデオの美術演出を担当。その動画が1億回再生され、世界的にも注目されるアートディレクターに。それ以前から原宿のKAWAII文化を伝えるワールドツアーを展開するなど海外でも活動し、17年には文化庁文化交流使に選ばれた。

「普通」に憧れて悩んだ20歳の頃

――(坂田)私は高校を中退してから社会の外側の人間だというコンプレックスがずっとあって、それを解消したいと思って大学に入り直しました。増田さんは一度「ドロップアウト」したにもかかわらず、今はなぜNPOを立ち上げるなど、社会に積極的に関わっていこうと思えるようになったのですか。

日本社会での「普通」って例えて言うと、サザエさん一家のような生活。生き方は人それぞれのはずだけど、なにか「正解」じゃないと人生はだめだというふうに思い込まされていて、それをぬぐい去るまでが大変だった。今でもまだ葛藤はあるよ。

ぬぐい去れたというよりは、どうしても自分の内側にある衝動みたいなものが抑えきれなかったという感じかな。何度も「普通」に憧れてそっちのレールに行こうとするんだけど、自分は何のために生まれて、何を表現したいんだと思い直して自分の道に戻る、その繰り返し。

18~20歳ぐらいの頃が人生で一番悩んでた。高校では勉強もあまり楽しくなくて、地元の友達にもなじめず、逃げるように原宿に通ってた。その仲間にはちょっと悪い子もいて、縁を切りたくて高校卒業後は大阪に行きました。心機一転、まずバイトを始めたら、自分は大阪弁を話せないから「なにすかしとんねん」というようなことを言われて怖くなってしまって、ひきこもっちゃったんです。毎日やることがない、お金もクーラーもないから、夏は図書館へ通っていました。

文学からビジネス書まで100冊以上の本を読みながら、ずっと自分の将来を考えていました。大学に行って就職すれば「普通」の人生が送れたのに、自分はドロップアウトしてしまったのでもう未来がないかもしれない、と絶望していたのが20歳ぐらい。

「普通」じゃなくてもいいのかもと最初に思えたのは図書館で寺山修司さんの本を読んだとき。既成概念にとらわれるなというメッセージにはっとしました。そして「書を捨てよ、町へ出よう」という本を読んで、引きこもっていないで行動しなくちゃいけない。もう一回東京へ帰って、何ができるかわからないけどやってみようと再起した。

東京に戻ってからは寺山さんへの憧れから前衛的な劇団に入って、自分の作品をつくってみたものの全然評価されなくてまた絶望。ある美術評論家からは「こんなのがアートだと言われたらおしまいだ」と説教されて、やはり自分には才能がない、世の中から必要とされてない、と落ち込みました。でも時間が経つと、いや、自分にしかできない表現があるはずだと何度も奮起するうちに行き着いたのが、原点の原宿だった。

原宿で店を開いたときも最初からうまくいったわけではなくて、初月の売り上げはたった2000円。でも「なんか面白いことやってる」って徐々に若い子や外国人が集まって、このエリア全体も「裏原」と呼ばれるようになり、自分が原宿という場所で認められるようになったときに、もっと自分のやりたいことをやってもいいんだと思えるようになった。

日本と海外の学生を結びたい

何が言いたいかというと、何でもない自分がここまできたのは自分の力だけじゃなくて下の世代の人が支えてくれたってこと。上の人からは批判されたけど。下の世代に何かできないかなと思って、日本のアートや文化を学びたい海外の若者と、海外で学びたい日本の若者を支援するNPO「ヘリウム」を今年7月に立ち上げ、次世代が交流できるスペースを作ろうとしています。

――(U22)京都造形芸術大学で客員教授となるなど教育者としても活動されていますが、最近の学生を見てどう感じますか。

日本の学生はあれもだめこれもだめと制約が多くて、SNS(交流サイト)もすぐ炎上するせいか、考え方が小さくなっている気がします。文化庁文化交流使として1年かけて世界を回ったときに、現地の20歳ぐらいの子にも会うんだけど、すごく積極的なのね。いま試験的にインターン生として受け入れているオランダの学生2人も、お金がないと言ったらユーチューバーになったりクラウドファンディングをやったり、自分でどんどん考えて行動する。

だからNPOを始めたのも、世界の若者と、自分を支えてくれている日本の若い世代が同い年なのに全然違うから、交流できたら刺激を受けるんじゃないかと思ったんだよね。自分はもっとやっていいはずなんだと思えるようになるんじゃないかなって。

10年前のワールドツアーで出会ったファンの子たちが成長して、今度は逆に仕事をくれたりしたときに、ああ、未来ってこういうことかなと感じた。意外と5年後、10年後の未来は、今作っているんだなって。

「稼いでからやりたいことをやれ」は本当か?

――(大森)増田さんといえばきゃりーぱみゅぱみゅのイメージがありますが、クライアントから「同じような世界観を作って」と言われたりして、アートとビジネスの間で葛藤することはないですか。

まず自分の中にはアートディレクターとアーティストという2つの面があります。アートディレクターというのはクライアントとの仕事になるから、一番大事なのはビジネスとして成功させるということ。でもそれ以外に自分の作品をつくる時間がないと、心はズタズタになる。もっと自分には可能性があって色々な見せ方ができると思ってもそれをやらせてもらえるとは限らないし、イメージを固定されたくないという思いがある。

だから、アーティストである僕は、いかに"もうからないもの"を作るかということを考えている。今年は「見えない壁を視覚化させる」「穴というネガティブな存在をポジティブに変える」といった企画をやろうとしています。これってビジネスではできない。でもそういうメッセージを発信するパワーがあることが、自分の魅力の一つなんじゃないかな。いかにもうからない仕事をやるかによって、もうかる仕事がくるというような考え方だね。

――(大森)失礼かもしれないですが、増田さんはもう実績があって、余裕があるからできる部分もあるのかなと思ったのが、未熟な若者である自分の意見でして。僕は大学で始めたSUP(サーフボードの上に立ってパドルでこぐスポーツ)というマイナースポーツを普及させたいと思って学生団体も作って活動しているのですが、「まずは稼いでからやりたいことをやりなよ」と言われて悩むことが多いです。

それは僕も30歳のときに直面した。「6%DOKIDOKI」というブランドショップを今でも原宿で運営していますが、2000年ぐらいに大阪など地方に店舗網を広げたことがありました。自分は結構商才あるじゃん、と自信を持てた一方、関係者から「もっと売れるもの作ってよ」と言われて、悩みましたね。自分はこのままビジネスの道に進んでいくのかな…、でも自分がやりたかったのはアート作品じゃなかったっけ、と考えて色々な人に相談した。「そういうのは稼いでから浮いたお金でやればいいじゃん」っていう反応がほとんどだった。

じゃあ、もうかって余裕ができるのは何歳なのか計算したら、早くても35歳。これはやばいって思った。なぜなら30歳の感性って35歳や40歳のときにはもうないから。今作りたいものを作れなかったら終わってしまうと思って、1店舗だけ残してあとはやめました。自分は社会にメッセージを投げる方が好きだし、それによって皆が考えてくれる、感動してくれる方が刺激的だから。変な話、社会に投げたものって、返ってくる。お金じゃなくて違うモノで返ってくることもある。

青臭いと言う人がいるかもしれないけど、皆できないからそういうこと言うんだよね。バカになることがどれだけ大変か。

言葉の背景にあるストーリー読み取って

――(U22)広告や商品のアートディレクションからイベント企画、ファッションブランドまで幅広い仕事を手掛けられていますが、創作で苦労したことは。

自分のオリジナリティーを築くまで20年かかって、それまではやりたいことをやれない悔しさをずっと抱えてきたから、アイデアが思い浮かばないということはないですね。どの引き出しを開けようかと迷うぐらい。振り返れば、鬱屈していた若い頃にたくさん引き出しを作っていました。

僕はデザインをするときに、言葉をまず考えてから作っているので、デザインを学ぶ学生にも本を読むことをお勧めしています。そして本は活字で読んだ方がいい。皆ネットニュースとかは見てるだろうけど、あれは言葉じゃないからね。言葉というのはその背景に様々なストーリーがあり、色々な意味が込められているので、そういう含蓄も感じられる能力を鍛えてほしいです。

(文・構成 安田亜紀代)

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