断酒ではなく減酒をサポート 新薬の気になる効果は?

日経Gooday

2019年3月に減酒をサポートしてくれるという新薬が登場した。これを使えば減酒を進めやすくなるのだろうか。写真はイメージ=(c)Andriy Popov-123RF
2019年3月に減酒をサポートしてくれるという新薬が登場した。これを使えば減酒を進めやすくなるのだろうか。写真はイメージ=(c)Andriy Popov-123RF
日経Gooday(グッデイ)

酒量を減らしたほうがいいのは分かっているけど、なかなか減らせない――。これは多くの左党が持つ悩みだろう。アルコール依存症と診断された人はもちろん、そうでない人も、お酒のトラブルを未然に防ぐため、健康維持のために検討したい「減酒」。最近は減酒をサポートする減酒外来を始めた病院が登場したほか、2019年3月には「減酒」をサポートする新薬が登場するなど、減酒をとりまく状況が大きく変わってきた。酒ジャーナリストの葉石かおりが、今回は久里浜医療センター院長の樋口進さんに、新薬について話を聞いた。

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前回記事「飲み過ぎで体が心配な人 病院が『減酒』をサポート」では、アルコール依存症治療の現状についてお伝えした。かつては、「依存症の治療は断酒のみ」だったものが、近年、飲酒量を減らす「減酒」という選択肢が広がってきた[注1]。2017年には久里浜医療センター[注2]で「減酒外来」が始まっているし、まだ多くはないが、他でも減酒外来を設ける病院が出てきている。

飲む量を減らす減酒は、依存症レベルの人はもちろん、酒乱やブラックアウトなどの酒に関わるトラブルが不安な人、そして酒量が多くて肝機能の数値が悪い人などなら、ぜひとも実行してほしいこと。しかし、自分の意思だけではなかなか抑えられないという思いは、多くの左党が抱える悩みであろう。そんなときに、減酒外来を活用するというのは検討に値することだ。

さらに、今年3月には減酒をサポートしてくれるという新薬が登場した。減酒外来を設ける病院に加えて、減酒をサポートする薬も登場したわけだから、本気で減酒に取り組みたい人にとっては間違いなくいい環境になってきたといえるだろう。

この薬、飲酒量を減らしてくれるというが、どんなメカニズムで作用するのか、そしてその効果は? またどんな人が利用できる薬なのだろうか。

減酒をサポートしてくれる薬「セリンクロ」

気になる減酒薬は、大塚製薬の「セリンクロ(一般名ナルメフェン)」だ(※日本経済新聞の記事はこちら)。私は今年1月にニュースで目にして以来、ずっと詳細を知りたいと思っていた。

薬の説明によると、飲酒前に服用することで、脳内のオピオイド[注3]受容体の作用を調整し、飲酒欲求を低下させることにより飲酒量を低減すると考えられるのだという。…と言われても、私には理解不能である。樋口先生、この薬はいったいどういうものなのでしょうか?

「セリンクロは飲酒欲求を抑制する薬です。これを飲酒する1~2時間前に飲んでおくと、赤ちょうちんやネオンといった飲酒欲求のトリガーとなるものを見ても『飲みたい』という衝動が湧きにくくなります。そして、酔うことで気持ちいいと思う気持ちを抑えると同時に、酔いにより生じる自己卑下などのネガティブな気持ちも抑える効果があると考えられます。つまり、アルコールによって得られる効果が低くなり、飲んでも通常とあまり変わらなくなるのです」(樋口さん)

[注1]「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」(2018年)では、重度のアルコール依存症の人だけでなく、軽度の依存症の人にも焦点を当てた内容に改訂された。

[注2]アルコール依存症をはじめとした各種依存症の専門治療を中心とした病院(独立行政法人国立病院機構に所属)。1963年に日本で初めてアルコール依存症専門病棟を設立、アルコール問題に関わる医療で日本をリードする病院。2012年に、名称を「久里浜アルコール症センター」から現在の「久里浜医療センター」に変更。

[注3]オピオイドは、鎮痛作用や陶酔作用がある化合物。

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