株価のモノサシ「PER」 割安・割高の参考に同業種で比較

マイナス金利政策の導入後、構造不況に陥っている「銀行」もPERが平均8倍台と低迷が続く。個別銘柄ではみずほフィナンシャルグループが8倍台だ。利ざや縮小や融資先の先細りから、PERが低いからといって株価が単純に割安とは言えない状態だ。

反対に業種別PERが高いのが「医薬品」。平均で40倍を超える。景気動向に左右されにくい収益構造を投資家は評価。将来、利益水準が伸びると期待して先回り買いしている可能性も考えられる。

第一三共は新薬の開発・販売で英製薬大手と提携すると3月29日に発表し、株価は2営業日で25%上昇した。会社発表の予想1株利益に大きな変化はないが、新薬の効果で中長期で利益が伸びるとの見方からPERは一時60倍台に上昇。さらに買うには新たな強材料が必要な水準になりつつある。

このほか新しい市場を開拓する企業はPERが100倍を超えることもある。人工知能(AI)開発のPKSHA Technology(パークシャテクノロジー)や、カード決済代行のGMOペイメントゲートウェイなどだ。

PERはその企業の「過去の水準と比べて割安・割高をみる使い方もある」(松井証券の窪田朋一郎氏)。例えば三井不動産のPERは5年前に30倍台後半だったのが現在は15倍近辺。この間、事業モデルがほぼ変わらない点を考慮すると現在の水準は割安といえる。ソフトバンクグループのように事業構造が変化しやすい銘柄は過去との比較は難しい点も覚えておきたい。

短期の業績見通しもPERを左右する。ファナックは工場自動化関連で顧客の設備投資需要が弱まるとして20年3月期に6割減益となるとの予想を発表。PERは60倍台と9年ぶりの水準に上昇した。

日本株は低水準

市場全体の相場を測るときは株価指数ベースの予想PERを用いる。日経平均ベースのPERは足元で約12倍だ(図C)。2012年末に始まったアベノミクス相場以降おおむね13~16倍前後だったが昨年から下回る場面が目立ってきている。海外の主要市場のPERは米国が17倍台、ドイツが13倍台。日本株のPERは相対的に低く、水準だけを考えると株価が大きく反発してもおかしくない。

PERが下放れしているのは米中貿易摩擦を受けて企業業績の行方が不透明になったのが大きい。米中は貿易協議の再開で合意したが、市場では「米大統領予備選が近づく秋口にトランプ氏が対中政策を緩和するなどしない限り不透明感は続く」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏)との見方が有力。業績の行方が晴れるまで投資家の慎重姿勢は続きそうだ。

(坂部能生)

[日本経済新聞朝刊2019年7月6日付]