日本ラグビー、戦術で世界驚かそう 観戦の余韻に喜びノンフィクション作家・後藤正治さん

後藤さんが数多くの著作を書き継いできた書斎で(2019年6月、京都府八幡市)
後藤さんが数多くの著作を書き継いできた書斎で(2019年6月、京都府八幡市)
アジア初のラグビーワールドカップ(W杯)が9月20日~11月2日に日本で開かれる。著名人に自分自身が思うラグビーの魅力を聞くインタビュー企画「W杯だ!ラグビーを語ろう」第10回では、『ラグビーロマン』などの著作があるノンフィクション作家、後藤正治(ごとう・まさはる)さん(72)に日本ラグビーが歩んだ道にふれてもらう。

後藤さんはファンとしてラグビーを長く愛してきた。『ラグビーロマン』は同志社大学や日本代表の監督を経験した岡仁詩さんの評伝だが、日本ラグビーの歴史や関係者についても詳しい。「帰り道に『きょうは本当にいいものを見せてもらった』と思わせてくれる」。観戦の余韻に浸る喜びが、このスポーツの大きな魅力だという。

――ラグビーとの接点は。

「戦前の同志社大学の予科でラグビーをしていたオヤジは、生涯、ラグビーを愛していました。旧制三高との試合で磯田一郎さん(元ラグビー日本代表、元住友銀行頭取)とトイメン(試合で向かい合うポジション)だったと聞きました。僕は高校時代には水泳部で、ラグビーは校内の大会に出たくらい。大学でやろうと思ったものの1カ月くらいでやめてしまいました。ただ、ラグビー自体にはずっと興味がありましたし、息子も同志社香里高校でラグビー部でしたね」

――ラグビーとはどんな競技だとお感じですか。

「最初は見てもよくわからないと思います。だけど最終的には単純なスポーツ。走って、パスして、蹴って、シンプルに力と力がぶつかり合う。僕は観客席の最前列で見るのが好きなんですよ。声が聞こえたり、骨のきしみ合いが伝わってきたりして。迫力があるんですよね」

「取材でずいぶんスポーツを見ましたけど、一番ワクワクするのがラグビーという気がします。(ひいきチームが)勝っても負けても、帰り道に『きょうは本当にいいものを見せてもらった』と思わせてくれる。そういう満足感にひたった記憶がいくつもありますね」

――長く日本ラグビーを見てこられて、その特徴をどうみていますか。

「海外の強豪国と四つ相撲をとれる力は、かつて一度もなかったと思うんです。それでも1960~80年代に、ニュージーランド(NZ)でオールブラックス・ジュニアに勝ったり、イングランドと接戦したり、スコットランドを破ったりした。当時の日本ラグビーは戦術的には世界で最も進んでいたんじゃないかな。小さな体で強豪に肉薄しようとすれば、戦術的な工夫しかなかったわけで、ものすごく努力した。NZの地元紙が褒めたくらいですから」

――その後の日本代表はどうでしょうか。

「世界でプロ化が進んで、体格の差を埋める工夫が難しくなっていった歴史だと思います。87年にW杯が始まって、各国もそこで勝つために必死だし、プロ化の流れも止められないものですから。だからジャパン(日本代表)もパワーラグビーをやらざるを得ないところはあるわけなんだけど、技の力や工夫は大事にしてほしいなと思いますよね。今はそれがちょっと乏しいかもしれない」

「世界には『日本のラグビーは面白い』と思ってくれているファンがいます。それはジャパンが、外国人がアッと驚くような新鮮な戦術を見せてきたからだと思う。負けたら何も残らないような戦い方は、どこかむなしいと思うんですよ」