(3)企業が破綻するリスクがある
退職金はまだ受け取っていない財産ですから、金額が確定していないという問題があります。企業が破綻したとき、企業年金は既積立分が分配されるので多くを受け取れるのですが、退職金はほとんどもらえないことが多いようです。また、業績悪化などを理由に退職金水準が引き下げられることもあります。モデル額を過信せず80~90%くらいで考えておくのも一考です。
(4)転職した場合、モデル金額通りにならない
転職する時、確定拠出年金以外のお金は受け取ってしまうため、新しい会社ではゼロからまた積み上げることになります(確定拠出年金は個人型確定拠出年金[iDeCo]や転職先の企業型確定拠出年金に資産を引き継ぎ、積み立てを継続する)。モデル退職金は通常、新卒から定年まで勤めた社員の数字ですから、転職者は満額をもらえないことに注意が必要です。
自分の退職金・企業年金を知り「2000万円超え」を
会社員の多くは退職金・企業年金により、すでに「老後に2000万円」に向けて準備していることが分かったと思います。すでに2000万円のメドがたって安心してしまった人もいるかもしれません。しかし、「老後に2000万円」というのはスタートラインにすぎません。
より豊かな老後のために月1万円の増額を目指すなら、30年で360万円をさらに蓄える必要があります。長生きや介護・医療費の負担増に備えておきたいのなら、これまたお金が必要です。2000万円はしょせん平均値ですから、人それぞれの「老後に○千万円」があるはずです。
そもそも「2000万円使い切ったら、ちょうどお迎えがくる」なんてことはないわけですから、現実の老後の家計では余裕資金を残しておくことも必要です。つまり2000万円をためられる人は2000万円以上を目指しておくことが必要なのです。
自分の退職金・企業年金を知ることにより、皆さんは「老後に2000万円」問題とはっきりと向き合い、自分のこととして考え、乗り越えるヒントを手に入れたことになります。そうであれば、今回の「狂騒」も大きな意味があったと言えるかもしれません。
