スマホ契約の違約金1000円に下げ 本当にメリット?佐野正弘のモバイル最前線

最後の長期契約者向けの割引規制の影響はどうか。この規制が適用されれば現在提供されている長期契約のメリットが失われる可能性があるが、一方で他社に乗り換えて新規契約をした場合でも、既存の契約者との料金差がほとんどないことにもなる。それゆえ長期契約を理由に乗り換えをためらっていた人が、より安価なサービスを提供する他の携帯電話会社に乗り換えやすくなったといえるだろう。

だが総務省はこれまで、長期契約者を優遇するよう携帯電話会社に求めてきた経緯がある。それが突然長期間契約が損になるかのような規制を入れてしまうとなると、やはり携帯電話会社の長期優遇サービスにも見直しが必要になり、消費者に混乱を与えることになるだろう。

議論不足の制度案、行政には慎重な対応が求められる

この制度案は、電気通信事業法が改正されるのに合わせて施行が予定されているもの。既に改正案は国会を通過しており、2019年秋に施行される予定であることから、今後パブリックコメントを募るなどしてさらに検討された上で、法改正に合わせる形で適用されるものと考えられる。現時点ではあくまで「案」なので、内容がそのまま反映されるとは限らない。

そしてもう一つ、制度案は既往契約、つまり現在契約している料金プランには適用されないとされており、制度が施行されたからといって既存プランの仕組みが変更されるわけではない。制度案が提示するようなメリットを受けたいというのであれば、制度適用後に提供されるであろう、新しい料金プランに変える必要があることは覚えておきたい。

だが今回の制度案に関しては、その内容を議論する有識者会議「モバイル市場の競争環境に関する研究会」でも、打ち出された数字の根拠が乏しいなどいくつかの疑問の声が呈されていた。正直なところ、議論不足のままに総務省側の意向が押し通されてしまっている印象が強く、問題を少なからずはらんでいるように見える。

法改正までの時間が限られているとはいえ、制度案の内容は市場に与える影響が非常に大きいだけに、慎重な議論が求められるものであるはずだ。現在の案ありきで施行を急ぐのではなく、より時間をかけて内容を精査する必要があるのではないかと、筆者は感じている。

佐野正弘
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
MONO TRENDY連載記事一覧
MONO TRENDY連載記事一覧