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増える「高齢おひとり様」 死後託すサービスに広がり 終活見聞録(18)

2019/7/13

鎌倉新書はおひとり様の終活を「ソロ終活」と名付け、5月に60代以上の単身者らと夫婦のみで暮らす500人以上を対象に実態を調査した。いずれひとりで最期を迎えることに対して不安を感じる人は、全体の半数近くを占め、その理由に挙がった「託す人がいない」「孤独死」「専門知識がない」を三大不安要素とした。不安があるがまだ準備ができていない項目では、死亡届などの役所への提出や公共料金の解約手続きといった「死後事務」が87%に達し、最も多かった。「いい生前契約」では葬式や墓だけでなく、死後事務も加えたのはこうした背景があったからだろう。サービスを担当する執行役員の田中哲平さんは「おひとり様と接点のある事業者や終活支援を考える自治体とも組んでいきたい」と話す。

鎌倉新書が主催した「おひとり様の座談会」。「あとは野となれ」と言った人もいた(東京都江東区)

生前契約といえば、NPO法人の「りすシステム」(東京・千代田)や「きずなの会」(名古屋市)などが有名だ。死後事務に加えて身元保証や生活支援・葬送支援など様々なサービスを引き受ける。内容を充実させれば金額はかさむ。プランによっては100万円を超える場合もある。どちらかといえば資金に余裕がある人向けといえる。新規参入も増えている。「フェリーチェ結う」(東京・豊島)も昨年8月に事業を始めた。病院に入院する際の保証人業務や安否確認、葬儀や納骨などのエンディングサポートを主体に基本料金は92万円(税別)となっている。「当初はシングル女性向けだったが、今は男性にも対応している。がん患者をサポートしたり、ペット(成猫)と一緒に暮らしたり、おひとり様の生活の向上にも力を入れたい」と代表理事の杉浦秀子さんは他社との差別化を目指す。

■社会的な孤立防ぐ仕組みづくり重要

「孤独死対策サミット2019」では孤独死の現状が報告された

「孤独死対策サミット2019」と名付けたイベントが東京都内で開かれたのは5月中旬だった。ミニ保険を専門に扱う日本少額短期保険協会(東京・中央)が主催し、200人以上の関係者が集まった。「自宅内で死亡した事実が死後判明に至ったひとり暮らしの人」を孤独死と位置付け、現状が報告された。15年4月から4年間で孤独死した人は計3392人。うち男性が8割以上を占め、女性よりも孤立しやすい状況が浮き彫りになった。現役世代も男性で37%、女性で41%おり、必ずしも高齢者に限った問題ではないが、発見までにかかった日数は平均で17日、中には90日以上たっていたという事例もあり、身につまされる内容だった。孤独死があった部屋は残置物の処理などに費用がかかるだけでなく、その後で入居者を探すのも難しくなる。家主が受ける損害は原状回復や家賃保証などで約90万円だったという。

同サミットでは、国土交通省の担当者によるおひとり様向けの住宅セーフティーネット制度の解説、遺品整理業者からの現場報告、少額短期保険会社が扱う「孤独死保険」の案内もあった。東京都健康長寿医療センター研究所(東京・板橋)の研究員・桜井良太さんは「社会的孤立は死亡リスクを約1.5倍高める。外出して他者と交流したり、地域で見守るシステムをつくったりすることが重要」と説明した。そのうえで事業者による各種見守りサービスの紹介もあった。電気使用量の変化で居住者の「いつもと違う」状況を検知する「見守り電気」、事前に指定した曜日・時間に電話がかかって安否を確認する「見守りにーよんコール」など低価格のシステムだ。終活支援のサービスが多様化する一方で、高齢のおひとり様の増加にまだ対策が追いついていない現状を感じさせた。

(土井誠司)

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