空き家活用に追い風 法改正で店舗などに変更しやすく不動産コンサルタント 田中歩

 国土交通省によれば、戸建住宅のストック(約2800万戸)の面積の分布は、全体のうち100平方メートル未満が約3割、100平方メートル以上200平方メートル未満が約6割を占めています。今回の法改正で、これらの建物について建築確認申請の手続きの煩わしさが解消されるため、多くの空き家に再生のチャンスが出てきたといえそうです。

国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律案」の概要より抜粋

用途変更には改修が必要なケースも

 ここで注意しなければならないのは、建築確認申請が不要になったからといって、「何でもあり」というわけではないことです。

 住宅の空き家を別の用途に変えるといっても、そもそもは住宅としてつくられた建物です。店舗やシェアハウスなどを想定した建物になっていません。不特定多数の人が利用する店舗と個人が生活する住宅とでは、防火や避難に対する考え方が異なるからです。

 このため、住宅を店舗やシェアハウスなどに用途変更する場合、建築確認申請が不要といえども、原則として店舗やシェアハウスを建築するときの基準に合致するよう空き家住宅を改修する必要があります。

 建物の用途変更などに詳しい建築再構企画(横浜市)の佐久間悠代表によると、「用途を変更する場合には、用途規制や避難、排煙について、建築当時のルールではなく、現在のルールに合わせて改修しなければならないケースが多々ある。建築基準法とは別の法律、例えば消防法などの関係規定については従前のままなので、用途を変えることによる手続きには注意が必要」と警鐘を鳴らしています。

所有者や利用者、地域に「利益」

 とはいえ、これまでネックとなっていた検査を受けていなかった建物についても、ケースによっては用途を変更することで再生できるチャンスが生まれることは間違いなさそうです。

 例えば、駅近くに取り残された古い一戸建ての空き家であれば、店舗に用途変更すれば、建て替えよりも少ない費用で一定のリターンが得られる再生シナリオが描けるかもしれません。住宅街にある比較的規模の大きな一戸建てならば、シェアハウスとして再利用できるかもしれません。一戸建てだと大きすぎて借り手がいなくても、シェアハウスならば需要はある立地は多々あります。

 空き家の再生は、新築するよりコストがかからないケースが多くあります。うまく活用すれば、所有者や利用者、そして地域にとっても「利益」となるはずです。空き家が社会問題化する中、今回の法改正を契機に空き家の再生が活性化することを期待しています。

1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
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