米国に学ぶ財政の理念 赤字容認論は危うい(加藤出)東短リサーチ社長チーフエコノミスト

サンダース氏は5月上旬のテレビ番組でも「私は政府債務を心配している。それは正当な懸念だ。すべてのアメリカ人は心配すべきだ。政府債務を我々の子供や孫に残すべきではない」と語っている。左派のサンダース氏でさえそういった姿勢だとすると、同党の他の有力候補がMMTを政策に導入する可能性は益々低下する。

民主党急進左派で支持する声も

19年に入ってMMTが米国で一時話題になった理由のひとつに、18年11月に29歳で初当選して史上最年少の女性下院議員になったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏の影響がある。時の人として注目を浴びている彼女は、グリーン・ニューディール政策(環境保護のため大規模な財政支出をする)や社会保障制度拡大などの政策をMMTで財政赤字を拡張しながら行うべきと主張している。

アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員はMMTによる財政赤字拡大を主張している(6月、米ニューヨーク)=ロイター

ただし米紙ワシントン・ポストのキャサリン・ランペル記者は「オカシオコルテスは新人議員であり、大統領選候補者ではない。彼女は民主党でリーダシップを持つ立場にない。それゆえ彼女が『fuzzy math』(人目を引くことを重視した深く考慮されていないキャッチフレーズ)や大失敗を示したとしても誰が気にするだろうか。民主党の大統領選候補者が彼女の政策を支持しない反応を示すことは納得がいく」と論評している。

他方で共和党議員は伝統的に「政府債務の膨張は将来世代に対する借用証書の付け回し」という考え方を全般により強く持っている。このため上院でも下院でも多くの共和党議員がMMTに強い反対を表明している。民主党の前述のような状況とあわせて考えると、近い時期に米国でMMTが実際の政策に採用される可能性はほとんどないといえるだろう。

民主党支持派の著名経済学者であるローレンス・サマーズ・ハーバード大学教授(クリントン政権当時の財務長官)は、MMTを強烈な罵倒の言葉で攻撃しつつも、政府債務膨張に強く反対する共和党議員を「原理派」と呼び、彼らはあまりに硬直的だと批判している。「セキュラー・スタグネーション」(長期停滞)の下では財政赤字が少々増えても長期金利は跳ね上がりにくいと彼は言う。

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