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尾原和啓 自己評価下げる「呪いの言葉」から解放を

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日経doors

つい、口を突いて出がちな「私なんて……」という言葉。『モチベーション革命』の著者で、世界を飛び回りながら働くIT評論家の尾原和啓さんは、特に日本で顕著だというこの風潮に違和感を抱くそうです。マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモ、リクルート、Googleなどで活躍した尾原さんの経験を基に、自分の可能性に制限をかけないためには、どのような働き方をすればいいのか語っていただきました。

日本人の自己評価の低さは母親からの影響が強い

何気ないビジネスシーンで、「私なんて」「僕なんか」という言葉をたびたび耳にします。彼らはなぜか、こちらがお礼を言うほど、あるいは褒めれば褒めるほど、まるで称賛を受け取るのを拒否するように、こう言うのです。そして仕事で各国へ出張してみて感じるのは、このような傾向があるのは、どうも世界中で日本だけなのではないかということです。例えばこれがシンガポールやアメリカなら「当然よ、私、頑張ったもの!」と胸を張る、という具合です。

ある研究では、日本人の自己評価、つまりセルフエスティームが低い原因には、母親からの影響が強いというデータが出ています。例えば僕の知人女性は、子どもの頃から絵を描くことが大好きでした。小学校に上がった頃、自分の絵が市の賞を受賞し、学校の廊下に飾られた。彼女はそれが誇りで、授業参観の日に母親に見せた。すると他のお母さんが通り掛かり、「○○ちゃん、すごいわねえ」と褒めると、彼女の母親はまるで慌てたように手を振って、「いえいえ、○○なんて全然、大したことないんですよ」と言ったそうです。

この時、幼い彼女は「私って大したことないんだ」とショックを受けたそうです。それ以来、大好きだった絵を描いても母親の言葉がよぎるようになり、ついに描かなくなってしまったといいます。

もちろん、彼女の母親に悪気があったわけではないのでしょう。私たち日本人には、褒められたら謙遜することが美徳であるかのような意識を植え付けられてきました。しかし僕は、個人の素晴らしい能力に蓋をしかねないこの習慣に、静かな憤りを感じるのです。

世界で叫ばれる「アンリーシュ」

呪いを解くことを、英語で「unleash(アンリーシュ=鎖を外す)」と言います。実は既に数年前から、この「unleash」が、世界中のいろんな所で叫ばれているのです。賛否両論ありますが、一連の「#MeToo運動」なども、こういったムーブメントの一つでした。

僕の友人である予防医学研究者の石川善樹さんから聞いた話では、ある調査によれば、クリエイティブな人、イノベーティブな人が育った環境の共通点に、「母親にストレスがない」ということがあるそうです。もちろん父親の影響を強く受けた人も数多くいるのは事実なのですが、学術的なデータによれば、母親が子どもに与える影響の強さは、かなり大きいということなのです。

僕は決して、ここで母親の存在を責めたいわけではありません。なぜなら、母親もまた、社会によって「私なんて」という呪いをかけられてきたからです。大もとにあるのは社会の習慣です。まずそのことに留意した上で、自分に自信がない原因には、幼少期に自分へ最も強い影響を与えた人との触れ合いに原因があったかもしれないことに冷静に気付いて、今さら相手を責めるのではなく、自らアンリーシュしてあげましょう、と言いたいのです。

自分の価値を相対化させよう

なぜ親からの影響が、子どもに強く出てしまうのか? それは成長期における子どもの環境で、最も大きな存在であるからです。しかし、大人になれば、自分が過ごす環境は自分で選べます。つまり、自分に与える影響を、選べる、ということでもあるのです。

例えば僕は48歳なので、仕事をするときは、年下の方と組むことも多いです。すると、頼りにされる機会も増え、「尾原さんすごい」と言っていただく機会も増えます。しかし、いざ取締役クラスの方々と仕事をするとなると、環境は一変し、目上の方々から「尾原、まだまだだな」と叱咤(しった)激励されることもしばしばです。僕は、あえて自分の価値が固定化しないよう、関わる方の年齢や性別、業界や国などが偏らないようにしています。評価してくれる相手を分散させることで、自分に与える影響が偏りにくくなるからです。

先述した知人女性は、実家を出て1人暮らしを始め、当初はSE(システムエンジニア)として働いていました。ある時、職場でラフ絵を依頼されたところ、「絵がうまい!」と褒められるようになり、だんだんと自分でも絵を描き始めます。そして、休日になると書きためた絵をイラスト投稿サイトのpixivや、SNSなどで投稿するようになり、少しずつ、絵の仕事を増やしていっているそうです。

彼女の場合、「大したことない」と思い込んでいた自分の絵を、職場やインターネット上など、あらゆる場所で解放していくことによって再評価され、どんどん自信をつけていくことで、アンリーシュしていったのです。

ちょっとした「外し時間」を大切に

もし、思い当たることがあるのなら、ぜひ今いる環境を出て、自分を相対化してみることから始めてみてはいかがでしょうか。例えばTwitterやInstagram上には、趣味のコミュニティーがいくらでもあります。週末、遠方へ旅してみるのもオススメです。住んでいる場所と違う空気、土地に触れた途端、それまで会社などで縛られていた自分の価値を、相対的に見つめるきっかけにもなるでしょう。たまには、これまで行ったことのないお店で、1人でランチしてみるだけでも刺激になります。まずは日常の中からちょっとした「外し時間」をつくってみると、「今の環境だけが自分のすべてじゃない」と思えるはずです。

誰もが、多かれ少なかれ呪いを受けて生きてきました。だからこそ、誰を責めることもなく、自立してアンリーシュすることこそ、大人らしい選択ではないでしょうか。あなたが自分をアンリーシュできたら、今度はあなたが、誰かをアンリーシュすることだってできるのです。

(取材・文 小野田弥恵)

尾原和啓
IT批評家。京都大学大学院で人工知能を研究。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、NTTドコモのiモード事業立ち上げを支援。その後、リクルート、Google、楽天(執行役員)などで新規事業や投資に従事。経産省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。シンガポール・バリ島を拠点に人・事業を紡いでいる。ボランティアでTED日本オーディションに従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。新刊:『アフターデジタル』 公式ツイッター:https://twitter.com/kazobara

[日経doors2019年4月8日付の掲載記事を基に再構成]

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