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尾原和啓 自己評価下げる「呪いの言葉」から解放を

日経doors

2019/7/12

自信が持てない原因に気付いて(イラストはイメージ=PIXTA)
日経doors

つい、口を突いて出がちな「私なんて……」という言葉。『モチベーション革命』の著者で、世界を飛び回りながら働くIT評論家の尾原和啓さんは、特に日本で顕著だというこの風潮に違和感を抱くそうです。マッキンゼー・アンド・カンパニーでキャリアをスタートし、NTTドコモ、リクルート、Googleなどで活躍した尾原さんの経験を基に、自分の可能性に制限をかけないためには、どのような働き方をすればいいのか語っていただきました。

■日本人の自己評価の低さは母親からの影響が強い

何気ないビジネスシーンで、「私なんて」「僕なんか」という言葉をたびたび耳にします。彼らはなぜか、こちらがお礼を言うほど、あるいは褒めれば褒めるほど、まるで称賛を受け取るのを拒否するように、こう言うのです。そして仕事で各国へ出張してみて感じるのは、このような傾向があるのは、どうも世界中で日本だけなのではないかということです。例えばこれがシンガポールやアメリカなら「当然よ、私、頑張ったもの!」と胸を張る、という具合です。

ある研究では、日本人の自己評価、つまりセルフエスティームが低い原因には、母親からの影響が強いというデータが出ています。例えば僕の知人女性は、子どもの頃から絵を描くことが大好きでした。小学校に上がった頃、自分の絵が市の賞を受賞し、学校の廊下に飾られた。彼女はそれが誇りで、授業参観の日に母親に見せた。すると他のお母さんが通り掛かり、「○○ちゃん、すごいわねえ」と褒めると、彼女の母親はまるで慌てたように手を振って、「いえいえ、○○なんて全然、大したことないんですよ」と言ったそうです。

この時、幼い彼女は「私って大したことないんだ」とショックを受けたそうです。それ以来、大好きだった絵を描いても母親の言葉がよぎるようになり、ついに描かなくなってしまったといいます。

もちろん、彼女の母親に悪気があったわけではないのでしょう。私たち日本人には、褒められたら謙遜することが美徳であるかのような意識を植え付けられてきました。しかし僕は、個人の素晴らしい能力に蓋をしかねないこの習慣に、静かな憤りを感じるのです。

■世界で叫ばれる「アンリーシュ」

呪いを解くことを、英語で「unleash(アンリーシュ=鎖を外す)」と言います。実は既に数年前から、この「unleash」が、世界中のいろんな所で叫ばれているのです。賛否両論ありますが、一連の「#MeToo運動」なども、こういったムーブメントの一つでした。

僕の友人である予防医学研究者の石川善樹さんから聞いた話では、ある調査によれば、クリエイティブな人、イノベーティブな人が育った環境の共通点に、「母親にストレスがない」ということがあるそうです。もちろん父親の影響を強く受けた人も数多くいるのは事実なのですが、学術的なデータによれば、母親が子どもに与える影響の強さは、かなり大きいということなのです。

僕は決して、ここで母親の存在を責めたいわけではありません。なぜなら、母親もまた、社会によって「私なんて」という呪いをかけられてきたからです。大もとにあるのは社会の習慣です。まずそのことに留意した上で、自分に自信がない原因には、幼少期に自分へ最も強い影響を与えた人との触れ合いに原因があったかもしれないことに冷静に気付いて、今さら相手を責めるのではなく、自らアンリーシュしてあげましょう、と言いたいのです。

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