3月に発売された新型軽クロスオーバーSUV(多目的スポーツ車)、三菱自動車「eKクロス」。同社が日産自動車と共同開発を始めて2世代目の軽シリーズだが、小沢コージ氏は「マントヒヒのような独自のネコ科マスクは今までにない」と評価する。そのマスクが生まれた背景について、同世代の担当デザイナー、大石聖二氏に小沢氏が話を聞いた。
軽自動車も顔が8割?
小沢コージ氏(以下、小沢) 以前トヨタ「ノア」「ヴォクシー」の開発者に、「ミニバンは顔が8割」と言われたことがあるんです。要は今のミニバンは中身以上に顔が重要なんだと。eKクロスを見る限り、軽ワゴンもそういう時代に入ったような?
大石聖二氏(三菱自動車工業デザイン本部プロダクトデザイン部デザイン・プログラム・マネージャー。以下、大石) はい、そう思います。というのも今、日本のクルマはどれも箱に近くなってますよね。軽もミニバンも。よってその開発者も基本同じことを言われていると思うんです。
小沢 そうなんです。新型ノア、ヴォクシーも競合に負けじと頑張って性能をアップさせたけど、それでもお客様から見ればおそらく同じような「箱クルマ」にしか見えないだろうと。よって顔で頑張った。
大石 実際、小沢さんも乗られて分かったと思いますが、今の軽って行くところまで行っちゃってると思うんです。三菱だけじゃなく、いまどき悪い軽ってほとんどない。今回はありがたいことにeKもみなさんベタ褒めで。
小沢 とはいえ前モデルのeKワゴンは遅かったですけどね。特にノンターボのほうは。
大石 ターボ付きは悪くなかったんですけど(笑)。まあ、カタログを見てもらうと分かりますけど、結局クルマは顔じゃないですか。
小沢 それって国民の美意識と似ていて、日本人って男も女も基本「面食い」じゃないですか。つまりイケメン好き。かなり乱暴な説ですが、日本人が根本的にボディースタイルが欧米人に比べて平たんだから必然的に顔重視になったという話があって。それってくしくもミニバンと全く同じ構造じゃないかと(笑)。
大石 そうかもしれません。
小沢 一方、かつて人気だったスズキ「ワゴンR」が今ひとつ伸び悩んでるのは顔作りで失敗したせいじゃないのかと。
大石 そこはノーコメントで。

狙いは「キュートビースト」
小沢 そうは言っても勇気が要りますよね、このマントヒヒのような大胆過ぎるネコ顔。