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子どもいない人生 「産めない」気持ちにどう寄り添う

日経ARIA

2019/7/11

■30歳を過ぎたら「いずれ結婚すればいいや」と焦りなく

アパレルの世界では、今まで会ったことがないようなスーパーウーマンたちが大活躍していました。面接で私を採用した女性役員はいろんなブランドを手掛けてきた人。「今までは大企業の看板で世の中が回ってきたけれど、これからは会社に頼らず、自分で生きていける力を持たないとダメ」と教えられました。

再び仕事にのめり込んでいき、気付いたら30歳を超えていました。30といえば、当然結婚していると思っていた年齢。でも、いざ過ぎてしまったら「いずれ結婚すればいいや」と、逆に焦りがなくなってしまいました。

「30歳をいざ過ぎてしまったら『いずれ結婚すればいいや』と、逆に焦りがなくなってしまいました」

■「産まない」と「産めない」は違うことを痛感

焦っていたのは親のほうです。当時、長く付き合っている人がいたので、「あなたたちどういうつもりなの?」と両方の親からたびたびせっつかれました。とうとう彼のお父さんが出てきて、「僕はもうすぐ定年だから、どうか現役のうちに式を挙げてくれ」と懇願されたんです。親たちに背中を押され、というかほとんど突き飛ばされるようにして、急きょ式を挙げました。

結婚を機に湘南に引っ越し、会社は辞めました。アパレルは毎日終電で帰るような激務。ここで一旦、自分がやりたいことを考え直したいと思ったんです。もともとトレンド情報を追いかけるのが得意だったので、2002年に「流行りもの情報サイト kiteru」というウェブサイトを立ち上げました。

結婚しても、子どもはなかなかできませんでした。当時は「妊活」という言葉もなかったし、フリーになって自分の力を試そうと仕事に軸足を置いたら、結構依頼も来て忙しくなってきた。そうやって35歳が過ぎ、40歳が目前になって、「あれ、私もしかして子どもがいない人生になるのかな」、そんな考えが頭をよぎりました。

思い描いていた人生とは少し違うけど、それもありかな……そんなふうにうっすら思い始めた矢先、子宮の病気が発覚して、子どもを産めないことが決定的になりました。

「産まない」と「産めない」は違う。今までは少ないながらも可能性があったものが、ゼロパーセントになった。その事実を突き付けられて、「ああ、何で今まで真剣に向き合わなかったんだろう」と、大きなショックを受ける自分がいました。

■涙を流しながら思いを吐露した女性たち

とはいえ、いつまでもしゅんとしていても仕方がない。生来の探究心で「子どもがいない人生ってどうなんだろう」ということが知りたくなり、いろいろ調べ始めたんです。そうしたら、あまりにも情報がないことに気付きました。

子どもがいない人たちだって居場所は欲しいはずだし、悩みもあるはず。それで、まずは子どもがいない人同士で集まりませんか? と呼びかけました。最初は15人くらいが集まり、子どもがいないことになった経緯や今の気持ち、世の中に対して思うことを話してもらった。そのときに初めて、「子どもがいない人のリアルな本音」に接したんです。

子どもがいない人は職場や友人の中にもいたりしますが、センシティブな問題なので、立ち入ったことまではなかなか聞けないですよね。一人ひとりの話を聞くうちに、「これは私が思っている以上に、みんなすごく傷ついたり、いろんな思いを抱えたりしていたんだ」ということが分かってきて、衝撃を受けました。しかも、多くの人が話しながら、途中から涙を流していたんです。単に「子どもがいない」というだけではとても済まされないことだと思いました。

まだまだ長い後半の人生、先が見えずに不安な気持ちでいる彼女たちが、どうしたら前向きになってくれるだろう。彼女たちの気持ちをすくい上げて世の中に発信することが、私の使命なんじゃないか。そんな思いで「マダネ プロジェクト」は始まりました。

(取材・文 谷口絵美=日経ARIA編集部、写真 花井智子)

くどうみやこ
大人ライフプロデューサー/トレンドウッチャー。メーカーの広告宣伝部、アパレルのプレスなどを経て、2002年より「トレンドウオッチャー」として活動をスタート。流行りもの情報サイト「kiteru」の編集長を務める。大人世代のライフスタイルからマーケティングまで、時流やトレンドをとらえた独自の視点で情報を発信。メディア出演や番組企画、執筆、講演など、幅広く活動する。近年は、子どもを持たない大人のマーケットに着目し、子どもがいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を主宰。著書に『誰も教えてくれなかった子どものいない人生の歩き方』(主婦の友社)などがある。

[日経ARIA2019年3月7日付の掲載記事を基に再構成]

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