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施工不良で立ち退き?どう対処 レオパレス問題で注目 弁護士 志賀剛一さん

2019/7/4

立ち退き料には様々な考え方と算定方法があり、事案によって異なるので、これが正解というものはありませんが、一般的に用いられる方法の一つに「実費・損失方式」と呼ばれるものがあります。

■移転に伴う損失部分の補填は含まれず

この点、レオパレスの提案は転居先の物件の敷金や礼金、住み替え手数料、仲介手数料、鍵の交換費、当月の日割家賃、翌月の家賃、引っ越し費用など、移転のための実費が「立ち退き料」として提示されているものと解されます。

これは借り主が移転するための初期費用をすべて支払う申し出と理解されますが、この提案には移転に伴う損失部分の補填が含まれていません。

移転するのにあえて安いところに住まなければならない必要はありません。また、首都圏に関していえば、賃料相場も上昇しているとのことです。このため、移転先の賃料が高額の場合もありうるので、その差額を一定期間(更新されるまでの2年間は一つの目安でしょう)負担させるぐらいの追加要求は妥当と思われます。なお、貸主の一方的な都合で立ち退くわけですから、清掃費や原状回復費の免除も要求すべきです。

■界壁施工の不備、補償の条件が後退

一方、界壁施工の不備の借り主に対しては「調査の結果、補修工事が必要であると判断されました際は、ご転居や一時的な住み替えをご希望によりお受けいたします」とされ、その際は、

(1)解約時違約金、基本清掃費、原状回復費の免除
(2)管理物件へ住み替え時の初期費用の免除
(3)住み替えにかかる引っ越し費用(当社指定業者の利用に限る)

がレオパレス負担となるようです。

前述した耐火性能が不足している場合と比較すると、補償の条件がやや後退しています。補修工事が必要となれば、当然、貸室内にも立ち入ることが予想され、借り主は仮住まいを余儀なくされることもあると思われますが、その「一時的な住み替え」まで借り主の「ご希望」というのはどういう意味なのでしょうか。

界壁施工の不備と前述の天井施工の不備が明確に区別できるのかどうかもわかりませんし、危険性は絶無ではありません。可能ならば、なるべく好条件を引き出したうえで、転居されるのが望ましいように思います。

■賃料の減額、交渉してみる価値はある

最後に、界壁内部充填材の相違及び外壁構成における大臣認定との不適合が発見されたにすぎない借り主について、レオパレスは「当社としましては性能に問題がないことを確認しておりますので、ご入居者様に直ちにお住み替えをご案内するような状態ではない」と説明しています。

確かに、この場合にも転居の補償を求めることは難しいかもしれませんが、使用部材の相違や不適合の度合いによっては賃料が減額されるべき場合もあると思います。

どの程度の減額が適切なのか、その確定は極めて難しいのは否定できませんが、交渉してみる価値はあるのではないでしょうか。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。

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