積み立て投資における時間の効用は、積立額や利回りの面以外にもある。それは、資産価格の変動が与える影響を軽減する効果だ。過去の相場をみると、資産価格は短期的に大きく下落しても、10年単位の長い期間では経済の成長を映して回復してきた。多くの場合、大きな下落に見舞われても、投資期間が長ければ、一時的な損失は時間の経過がいやしてくれる。

低リターンでも積み立て効果で2000万円

次に、積み立て投資のもう一つの要素であるリターンをみてみよう。表CはQUICK投信分類平均の時系列データから算出した、主な資産の年率の実績リターン(信託報酬控除後)とリスクだ。投信分類平均は対象期間中に運用しているすべての投信が対象なので、数値は分類ごとの平均的な投信の姿を表している。日本では30年間運用している投信がほとんどないため、ここでは過去10年と20年の数値を示した。

過去10年のリターンをみると、30年の積み立て投資(毎月3万3300円)で2000万円の資産をつくる前提となる3.3%に達しなかったのは、国内債券型投信だけ。リーマン危機後の長期上昇相場を反映し、いずれの資産も好調だった。

一方、期間を20年にすると国内株式型や、株式を主な投資対象とするバランス型は軒並み3.3%を下回った。期間中にIT(情報技術)バブル崩壊、リーマン危機という2回の大きな相場下落があったのが原因だ。

これでは仮に毎月の投資額をグラフBで示した理論値である5万9200円に増やして20年間積み立てても、目標の2000万円に達しないと思われそうだ。しかし実際はさにあらず。過去の相場に当てはめて試算してみると、年率リターンが1.7%の低リスクのバランス型(株式組み入れ比率が30%程度)でも、元本と運用益の合計は20年後に2000万円を超えていた(グラフD)。

これは同じ投資額でも相場が安いときには多くの口数が買えて、高いときには購入口数が減り、結果的に平均購入価格が低くなるという、投信積み立ての効果が生きたからだ。10年以上の長期の期間と積み立てという投資手法は相性がいい。

ちなみに積立期間を30年、毎月の積立額を3万3300円にした場合はどうか。投信分類平均に代わって米国株の代表指数であるS&P500を対象に積み立て投資を続けたとすると、2019年6月末時点の資産は積立元本(1200万円)の2倍以上の約2600万円になった(手数料、株式の配当は考慮せず)。

自助努力求めるなら国はマネー教育を

報告書をめぐる一連の騒動を眺めながら改めて感じたのは、お金をテーマにした教育の大事さだ。基本的なお金の知識が乏しいゆえに、世の中に不安や不信が広がってしまった面がある。国は国民に自助努力を求めるなら、少なくとも公的年金制度の基本や投資という経済行為の意味を、中学校や高校で教えるべきだ。複利やリスク・リターンなどの知識も、円周率や光合成と同じように身につくようしてほしい。

そして資産運用に関連する業界には、この機会にぜひとも資産形成や運用は当たり前の行為であると、人々の意識を変える働きかけをしてほしい。せっかく金融庁が大批判を浴びて生まれたこの好機を、生かさない手はない。

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