仕事しつつ起業は大変 資産づくりのプロも苦戦

日経マネー

写真はイメージ=123RF
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4月に定年を迎えたフィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史さんは、週3日はフィデリティでの仕事を続けつつ、新しく個人の仕事も始めました。お金の専門家としての視点も交えながら、定年体験をフランクにつづる「野尻さんの定年1年生」は、前回の「週2日『複業』します 資産づくりのプロの定年事始め」に引き続き、今回が2回目です。

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令和のスタートとともに、「ロクヨン人生」と称して、2つの仕事を6割(週3日)と4割(週2日)に分けて、「複業」として始めました。一方を残りの「副」とするのではなく、共に同じ位置付けで、というのが「複業」の意味です。それは、単に「定年後も働く」というだけでなく、いかに長く働けるようにするかの方法でもあると思います。

そして、その4割の仕事用に会社を立ち上げることにしました。今回は定年後の起業について、私の事例を紹介することにします。

会社を興す難しさを痛感

皆さんは会社を作ったことがありますか? 私はこれまで全く考えたことがありませんでした。もともとは個人事業主としてやっていく程度のつもりでしたから、会社まで立ち上げるのは想定外でした。いや、そもそも「個人事業主って何?」って程度の理解でした。

オフィスはベンチャー企業などとのコワーキングスペース内にある

「会社を立ち上げる」と言っても、「どうすればいいのか」「そもそも自分が作るとしたらどんな会社があるのか」「まさか株式会社を作るってわけじゃないし」といった、まあなかなか厄介な水準からのスタートです。

定年を迎える半年くらい前だったと思います。知人の税理士に「会社を作りたいんだけど助けてくれる?」って相談に行きましたが、なかなか要領を得ませんでした。というのも私が何も決めていない段階で、「何したらいいの?」という程度で聞きに行ったからでしょう。要領を得なかったのは税理士ではなく私だったのです。

ウダウダしている間に時間だけは過ぎていきます。まだサラリーマン生活をしているわけですから、それほど起業の作業に時間を割くことはできません。ということで友人に薦められるまま、ノウハウ本を数冊買い込んで、それも読まずに積む「積ん読」がしばらく続いた後、やっと読み始めました。

読んでいくうちに痛感したのは、自分のやりたいことがはっきりしないうちは何も見えてこない、ということです。何しろ会社を興そうとすれば「定款」が必要で、そこに書き込むのはやはり「何をやりたいか」になるわけですから。しかも、フィデリティ退職・投資教育研究所とのすみ分けをどうするかも必要になります。といってやっている自分はどちらも同じ野尻哲史なのです。

そこで改めて思ったのが、資産運用にとどまらない定年後のお金との向き合い方を「同時進行で」伝えていくことでした。となると、働き方も大切なポイントで、会社を立ち上げたいという気持ちに一本化できました。そこから、株式会社にするのか、合同会社にするのか、後はその会社の方式を選ぶことになります。