「戦時投資シナリオ」点検 まさかに備え(平山賢一)東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長

その時、株は…

では、第2次世界大戦終戦時に株式を保有していた場合、戦後のインフレーションに耐えられたでしょうか? どのインフレ率を採用するか、どの株価で比較するかにより結果は異なりますが、1つのめどとして数値を計算してみましょう。

日本の株式市場は、終戦から間もなく店頭取引で取引が始まりますが、日本銀行のデータで確認できるのは、1946年8月以降の東京株価指数(フィッシャー算式・東京証券取引所調べ)です。配当込み指数ではなく、時価総額加重平均指数ではないという難点はありますが、「東京闇及び自由物価指数(消費財)」の起点である1946年9月を100として、物価指数と比較するとグラフのようになります。

このグラフ上の株価は、東京小売物価指数には及ばないものの、1949年半ばには消費者物価指数(総合指数 全都市)や東京闇及び自由物価指数(消費財)を上回っています。その後「ドッジ・ライン」による財政金融引き締め政策の影響で株価は軟調になったものの、配当も含めれば終戦1年後を起点にした場合、物価上昇に大幅に劣後したとは言えず、国債と比較するならば圧倒的な強みを発揮していると言えるでしょう。

戦争シナリオの教訓

終戦時(1945年8月)を起点にすると、株価は数倍程度しか上昇していないため、100倍に上昇した東京小売物価指数には遠く及ばないものの、価格が上昇しなかった国債と比較するならば、株式投資による投資成果が圧倒的に優れていたことが確認できます。

いずれにしても戦争シナリオが教えるのは、(1)戦時中は統制や過剰な政策により「幻の安定期」が演出されること(2)終戦後は不安定な経済情勢から投資成果もぶれることが想定され、危機の回避が賢明――といえるでしょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
平山賢一
東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長。1966年生まれ。横浜市立大学商学部卒業、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。東洋大学経済学部非常勤講師。30年にわたり内外株式や債券をアセットマネジメント会社で運用する。著書に「戦前・戦時期の金融市場」「振り子の金融史観」などがある。
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