「戦時投資シナリオ」点検 まさかに備え(平山賢一)東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長

20世紀初頭と異なり、グローバルな相互依存関係が強まっているため、そこからの分断は、かつてとは比較にならないほど大きな影響を与えます。この場合も、一部の輸出品はだぶつくものの、海外に依存していたモノやサービスが枯渇するため、国内のインフレ圧力が高まることが考えられます。

経済見通しに暗雲

要するに従来型戦争も、新タイプの紛争も、国内のインフレ圧力を高める可能性が高いと言えます。さらに我が国のような資源輸入国の場合、中東でのエネルギーサプライチェーンの分断が輸入物価押し上げにつながるため、紛争当事者でなくとも、物価上昇の影響を受けかねません。

例えば最近では、イランと米国の関係悪化に伴い、落ち着いていた原油価格が上昇していることなどが当てはまるかもしれません。

強まる金融政策依存

このように対立構造が強まれば、経済見通しにも暗雲が垂れ込めます。すると、景気悪化を回避するために組まれるのが経済対策です。昨年と打って変わり、世界の中央銀行は国際社会の不透明感の高まりを背景に、金融引き締めから緩和へとカジを切り始めています。

政策金利の水準を一段と下げ、金融市場や金融機関に資金を大量に供給し、投資マインドを刺激しようとしているわけです。

世界中でマネーが供給されれば、反対にモノやサービスの希少性は一段と高まります。第2次世界大戦の際には、特に日本では物資の枯渇から、インフレ圧力が高まったものの戦時統制も強化されたため、公式の物価は統制価格で抑制されていました。

ところが今回は、近年の失業率の低下や生産年齢人口比率の低下に鑑みると、物資などのモノの価格よりも労働コストの上昇が加速することが考えられます。政治的な混乱期には、政策金利水準を低下させるだけでなく、国債利回りも抑制するため、国債価格は表面上は安定を保つことになります。

インフレの足音

とはいえ、インフレ率が上昇するならば、実質的な価値は目減りしてしまうことになります。わが国では、1940年代前半の国債利回りが約3.7%に半ば固定化されていたため、国債価格の暴落で損失を被る投資家はいませんでした。また、戦後も順次、日本国債は額面で償還されました。

ただ、40年代前半の東京小売物価指数の年率上昇率は10%を超え、実質購買力は毎年6%強目減りしたことになります。戦後約5年間で、東京小売物価指数は約100倍になったため、購買力は実質的に100分の1に減価されたといえます。つまり、国債投資の成果は最悪だったのです。

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